たった一機で、地方の人びとの生活や医療、観光を支える、熊本・天草の小さなエアライン。
その数々の苦難と人間ドラマを描く、異色の〈実名〉ノンフィクション・ノベル。
「天草エアライン」は、県と地元市町、地元企業の共同出資で平成12年に創設され、地方自治体が単独経営する日本初の定期航空会社。天草から熊本、福岡、大阪を結び、観光や医療活動にも貢献している。人口15万人の土地に85億円の天草空港をつくることに対し、当初、メディアから大バッシングを受けた。結局、就航する航空会社が見つからず、熊本県は自前で航空会社を立ち上げるという挑戦に踏み切る。素人の自治体が航空会社をつくり、飛行機を買って、それを定期路線で運航することは到底不可能だと誰もが思っていたが……。
用地買収、機体の選定・購入・引渡し、人材確保・訓練、国の認可・試験、機体トラブル、パイロットやCAの引き抜き、悪天候、パイロット同士の対立、資金繰り悪化・倒産危機、買収提案……開業後も次々と立ちはだかる障害に、彼らは「肥後もっこす」の意地で知恵を絞り、励まし合い、思いがけない支援の手に救われながら、ひとつひとつ乗り越えていく――本書は、エアライン設立に携わった熊本県庁「7人のサムライ」はじめ地元関係者、歴代経営陣、従業員、国土交通省、国内外の航空会社など、多数の関係者への取材をもとに、現在も続く奮闘の姿を、抒情溢れる天草、島原、有明海の風物とともに活写する。なお人物や組織はすべて実名で登場する。
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