《戦争や革命勃発の背後にアメリカ産小麦の存在――》
19世紀初頭より帝政ロシアは、ウクライナの黒海に面したオデーサの活況を呈する港を通じて、ヨーロッパの大部分に食糧を供給していた。しかし、アメリカ南北戦争の後、大量のアメリカ産小麦が大西洋を渡ってヨーロッパに押し寄せるようになり、食糧価格は急落した。安価な外国産穀物は、ドイツとイタリアの台頭、ハプスブルク家とオスマン帝国の衰退、そしてヨーロッパ各国による勢力圏の争奪戦に拍車をかけ、第1次世界大戦とロシア革命が勃発する決定的な要因となった。
国家の盛衰に説得力ある新たな解釈を加えた本書は、大国同士が鎬を削るなかにあって、穀物の支配が比類のない力を示してきたことを物語っている。従来の歴史観をゆさぶる注目書。
【目 次】
はじめに
第1章 黒い道 紀元前1万年~紀元前800年
第2章 コンスタンティノープルの門 紀元前800年~紀元1758年
第3章 重農主義的な膨張 1760年~1844年
第4章 ジャガイモ疫病菌と自由貿易の誕生 1845年~1852年
第5章 資本主義と奴隷制 1853年~1863年
第6章 アメリカの穀物神 1861年~1865年
第7章 爆発音と大変化 1866年
第8章 何をなすべきか 1866年~1871年
第9章 穀物の大危機 1873年~1883年
第10章 ヨーロッパの穀物大国 1815年~1887年
第11章 「ロシアはヨーロッパの恥」 1882年~1909年
第12章 オリエント急行、行動軍 1910年~1914年
第13章 パンをめぐる世界戦争 1914年~1917年
第14章 権力の源泉としての穀物 1916年~1924年
おわりに