タマムシが教えてくれた自然の見方。
人間中心的な自然観を越えて「人新世の生物学」を創成するために。
タマムシの翅はなぜ玉虫色に輝くのか。
この素朴な疑問から出発した研究は、作業仮説一つ一つを丹念に検証し、
玉虫色を生み出す構造の発見へとつながった。
しかし話はタマムシの翅だけにとどまらない。
生物がもつ感覚世界の存在を認めることの意味、
画期的な観察技術NanoSuit法の確立、
バイオミメティクス研究へと大きく広がる。
科学研究の醍醐味を生き生きと描き、人間中心の世界の捉え方に警鐘を鳴らし、
科学のあり方、あるいは知のあり方までも考えさせる一冊。
●本文より
進化とはなにか、生物の環境適応とはなにかなど、
数多くの解答を与えてくれる生物の一つが昆虫であり、なかでも甲虫なのです。
「ムシを知らずして生物を語るべからず」ですね。
そして、タマムシ色の輝きがどうやってできているかを知ることは、
生物の進化の謎の一端を覗くことにもなるのです。
●目次
第1章 タマムシとの出会い
第2章 ヤマトタマムシがいた
第3章 タマムシの輝きの秘密
第4章 タマムシの鞘翅の構造
第5章 タマムシの色ってどんな色
第6章 タマムシの輝きのわけ――タマムシの種内コミュニケーション
第7章 生物の視覚――タマムシが見る
第8章 ヒトが見る光
第9章 タマムシたちには見える――ヒトが見えない光
第10章 NanoSuit法の発見――あたりをつける実験
第11章 バイオミメティクス――既存の学問を総合的に利用して自然の理解へ
第12章 タマムシに学ぶバイオミメティクス
第13章 マントの考え方:風土・文化そして蟲瞰学