組織の不祥事が報道されると「自分なら絶対にやらない」と思う。だが、いざ当事者になると、個人ならしない悪事でも多くの人は不承不承、あるいは平気でしてしまう。
なぜ集団になると、簡単に同調・迎合し、服従してしまうのか。
著者は同調や服従に関する有名な実験の日本版を実施し、その心理を探る。
一方でタイタニック遭難など、緊急時に助け合い、力を発揮するのも集団の特性である。
集団の光と闇を解明する試み。
■□■ 目 次 ■□■
はじめに――集団心理の光と影
序章 集団とは何か
第1章 わが国で行われた服従実験で明らかになったことは何か
1 責任を「人」に押し付ける
2 服従実験と悪の凡庸性
3 筆者が行った服従実験
4 日本での服従実験の結果は?
第2章 服従の理由は? 第三者の感想は? 実験の問題点は?
1 なぜ参加しようと思ったのか
2 服従を促進する要因は何か
3 なぜ離脱できないのか
4 服従実験の観察者は実験をどのように見るのか
5 服従実験の問題点①――生態学的妥当性の問題
6 服従実験の問題点②――方法論と倫理の問題
第3章 同調行動はなぜ起きるのか
1 同調とは何か
2 同調の分類
3 無意識に影響を受ける
4 緊急事態で大きくなる影響
5 集団規範による影響
第4章 現代日本人の同調の特色は何か
1 同調行動に影響する要因
2 筆者が実施した同調実験
第5章 同調行動はどのように拡散するのか
1 ロジスティック・モデル
2 同調の広がりに関する実験
3 大集団での同調は?
第6章 緊急事態では人は理性的に振る舞うのか
1 集団のネガティブな側面の研究
2 緊急事態では人は理性を失うのか?
3 実際の緊急事態の行動と意思決定の研究
4 9・11同時多発テロ時の世界貿易センタービルからの避難
第7章 航空機事故発生時の機内で人々はどのように行動したのか
1 ガルーダ・インドネシア航空機福岡空港離陸失敗事故
2 事故発生時の客室内
3 乗客の認識
4 脱出時の行動
5 調査のまとめ
終章 集団の光と影に何が影響するか
1 社会の価値観
2 加害者と被害者の視点の違い
3 内集団と外集団
4 行為者と観察者の認識の食い違い
5 光と影の非対称性(影が光より強いのか)
あとがき