脊髄性筋萎縮症Ⅱ型という進行性の先天性障害をもち、3歳までしか生きられないと医者に言われた著者の半生記と娘の自律精神を涵養した母の子育て記。障害が変化・重度化することを前向きに捉え、地域で人と人をつなぎながら豊かな関係性を生きる姿は爽風のよう。
地域で暮らすのが当たり前になる仕組みを作るため、
命を賭けて言葉を伝え、人と人をつないで生きる。
新章を追加!
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私は、「価値のある人間と価値のない人間」という区別や優劣、順位があるとは思いません。価値は、人が創り上げるもの、見出すものだと信じているのです。
樹齢千年の縄文杉を見て、ただの木でしかないのに感動したり、
真冬、青い空に映える真っ白な富士山を見て、ただの盛り上がった土の塊にすぎないのに清々しい気持ちになれたりと、価値を創り出しているのは人の心です。これは、唯一人間にのみ与えられた能力だと思います。
そう考えるとき、呼吸器で呼吸をし、管で栄養を摂り、ただ目の前に存在しているだけの人間をも、ちゃんと人間として受け入れ、その尊厳に向き合い、守っていくことも、人間だからこそできるはずです。
それができなくなった時、相模原であったような、悲惨な事件が起こってしまうのではないでしょうか。
(増補新装版 新章「知事への手紙」より)
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【主な目次】
第Ⅰ部 「自分」を生きる~障害と共に成長して~ 海老原宏美
1 私の障害のこと
2 母について~私の根源~
3 自立への三大革命
4 自立の第一歩は「降りますボタン」から
5 九死に一生! 人工呼吸器導入
6 快適な生活を支えるもの
7 自立生活センター(CIL)について
8 呼ネット~人工呼吸器ユーザー自らの声で~
9 存在する価値
10 呼吸器かついで旅に出る
11 重度化について~成長する障害~
12 障害者を生きる
第Ⅱ部 泣いて、笑って、ありがとう 海老原けえ子
1 宏美と共に歩んだ二四年
2 二四年の胸のうち
第Ⅱ部のあとがき
第Ⅲ部 風のおくりもの ―― 増補新装版への追記 ―― 海老原宏美
1 知事への手紙
2 相模原障害者殺傷事件を振り返る
3 自立生活をすべての人に開かれたものにするために
4 自ら変われる社会を信じて
あとがき
増補新装版あとがき