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【内容】
● 中小企業が末永く発展することで、すべての人々を幸せにしたい
本書は中小企業診断士と弁護士による共著です。中小企業診断士はその名の通り、経営コンサルティングの専門家であり、弁護士は法律の専門家です。著者はいずれも「中小企業の末永い発展」を目指しており、日夜多くの企業をコンサルティングしています。しかし、事業承継やスモールM&A について、経営者に正しい知識が伝わっていないことを憂慮し、本書を書きはじめました。
● 昨今の中小M&A の問題について
近年、中小企業の経営環境は急速に変化しています。後継者不足や市場の競争激化に直面し、自社の未来について、様々な可能性を考える経営者が増えています。その中で、事業承継や成長戦略の一環として「中小M&A」を検討するケースが目立つようになりました。しかしながら、M&A は単なる企業間の売買取引ではありません。それは、経営者のこれまで築き上げてきた努力と想いを未来に託す「経営のバトンタッチ」です。このバトンタッチを成功させるためには、単に譲渡価格や契約条件の交渉だけではなく、譲渡後の事業運営や統合プロセス(PMI: Post Merger Integration)までを見据えた準備と対応が必要です。安易なM&A による失敗例も少なくなく、こうした失敗は、譲渡側・買収側の双方にとって大きな後悔をもたらします。また、M&A を検討する前に、自社の経営基盤をしっかりと整える経営改善が非常に重要です。経営改善の取り組みを怠ったままM&A に臨むと、買い手にとっての魅力が乏しい企業と見なされ、売却価格の低下や交渉条件の悪化を招く可能性もあり、本来の企業の価値を十分に表せないこともあります。たとえ売却や買収が成功しても、経営基盤が脆弱なままでは統合後の運営に困難をきたす可能性があります。業務プロセスの見直しや収益構造の改善を図り、自社の強みを明確化することが、M&A の成功確率を大きく高めます。さらに、M&A を検討している企業でもあっても、後継者の育成を計画的に進めることは非常に重要です。後継者が存在することによって、M&A 以外の選択肢も広がります。経営者が後継者の能力を高め、経営力を高めることで、「企業価値」は高まります。後継者がいない場合でも、自社の価値を最大限に高めるために、経営ノウハウや企業文化の共有を進めておくことが重要です。こうした準備は、M&A の交渉を有利に進めるだけでなく、譲渡後の企業価値の維持・向上にも寄与します。
● このような経営者にお読みいただきたい
本書は、まず、M&A を規模別に①大企業M&A ②中小(企業)M&A ③スモールM&A と分類しています。第1 章を中小M&A を中心に、第2 章・第3章をスモールM&A を中心に書いております。そして中小企業経営者がM&Aの失敗を未然に防ぎ、中小企業が中小M&A を通じて真の繁栄を実現するために必要な知識と視点を提供することを目的としています。特に、次のような課題に直面する経営者にぜひ読んでいただきたいです。
・自社内に、後継者がおらず、事業承継の手段としてM&A を検討している。
・新規事業や他地域への展開を目指して他社の買収を考えている。
・M&A の進め方やリスクについて漠然とした不安を抱えている。
・譲渡後の従業員や取引先との関係をどのように維持すべきか悩んでいる。
特筆すべきは、中小企業における中小M&A と大企業のM&A とは大きく異なり、独自の課題が存在することです。買い手と売り手の信頼関係や地域社会への配慮、企業文化の違いへの理解など、中小企業ならではの要素をしっかり経営者が把握することが成功の鍵となります。また、M&A 後の統合作業において、買収企業が新たな組織を効率的に運営できるかどうかも重要なポイントです。
● 中小M&A をサポートできる中小企業診断士
本書では、具体的な事例を交えながら、これらの課題にどのように向き合うべきかを解説します。また、M&A を成功させるための重要なパートナーとして「中小企業診断士」の活用を強く推奨しています。中小企業診断士は、事業承継や組織統合、新規事業の展開など、幅広い経営課題に対応できる専門家です。企業における「ヒト・モノ・カネ」の全てに精通している国家資格の経営コンサルタントです。中立的な立場で経営者を支え、企業の強みや課題を客観的に分析し、M&A 後の統合プロセスをスムーズに進めるための助言を行います。
この本が、読者の皆さまにとって、中小M&A をより深く理解し、成功への道筋を描く一助となることを願っています。そして、M&A という選択肢が単なるリスクではなく、自社と譲受企業の未来を共に切り拓く希望に満ちた決断となるよう、その準備と実践を支援する1 冊であることを目指しています。
さあ、共に未来を描きましょう。本書が皆さまの経営判断に少しでも貢献できることを心より願っています。