中央アルプスに、半世紀ぶりに現れた1羽のライチョウ。
その姿に感動した著者は、鳥類学者として長年積み重ねてきた経験と情熱をもとに、この地にライチョウを復活させることを計画する。
本書は、絶滅が宣言されたこの山域で、ライチョウを再び定着させるために始まった保護活動の全記録である。
ケージ保護、卵の移植、動物園での飼育、ヘリ輸送など、前例のない挑戦の数々――鳥類研究に人生を費やしてきた著者を中心に、山に関わる数多くの人々が、次々と現れる課題と向き合いながら、一歩ずつゴールを目指していく姿が克明に綴られている。
その背景には、気候変動や生態系の変化、登山文化のあり方といったテーマがあるが、本書で語られるのは、現場で積み重ねられた事実と、粛々と進められた試行錯誤の過程だ。
山を楽しむ人なら誰もが知っている山岳風景の、その裏側に広がる知られざる保護の現実。なぜライチョウは戻ったのか、そして、これから山はどうあるべきか。
全ての山好き、自然好きに捧げる、渾身のサイエンスドキュメント!
■内容
序章 中央アルプスに半世紀ぶり雌が飛来
第1章 復活にあたり参考となる過去の事例
第2章 解明された日本のライチョウの隔離と分化の歴史
第3章 卵差し替えの試み
第4章 北岳でのケージ保護の成果
第5章 中央アルプスでの事前調査結果
第6章 本格的に開始された復活事業
第7章 背水の陣となった乗鞍岳のケージ保護
第8章 悪天候に阻まれたヘリ輸送
第9章 20羽からのスタート
第10章 ケージ保護した家族を動物園に降ろす
第11章 腸内細菌とアイメリア原虫の課題
第12章 動物園に降ろした家族の雌親が死亡
第13章 動物園でライチョウが育てた雛を山に戻す
第14章 第20回ライチョウ会議駒ヶ根・宮田大会
第15章 復活した中央アルプスのライチョウ
第16章 最後の課題 野生復帰技術の確立
第17章 雛の輸送中に起こった信じられない事故
第18章 日本のライチョウの今後
第19章 日本のライチョウの未来