演劇好きの葛城ゆいかは、医学部を目指す高校三年生。ある日、目覚めたら愛読書『ラ・カスティージャの秘宝』の悪役令嬢である伯爵令嬢テネフェリになっていた。わけもわからないまま、彼女は憧れのアルフォンソ王子からいきなり冷たい言葉を浴びせられてしまう。
王子が激怒するのも無理はない。テネフェリは、イリオン国から来賓としてやってきた王子の婚約者マルガレーテ王女の部屋に無断で忍び込み、宝石を盗んだのではと疑われているようなのだ。窃盗容疑は晴れたものの、無断で侵入したことには変わりはない。しかし、王女はテネフェリが自分の侍女として仕えることで許してくれるという。王女の温情に感謝したのも束の間、テネフェリを侍女にしたのは由緒ある伯爵家の令嬢であるテネフェリを利用して、国家の秘密を探るためだった。王女がイリオン国王である父から密命を受けていることに気づいたテネフェリは、王子に危険を知らせようとするが……。