大藪春彦新人賞受賞作家が綴る、
心揺さぶる感涙の時代小説。
天涯孤独の少女が本当の愛に触れたとき、
ひとり心に誓ったのは――。
命を狙われ、西国から遠く江戸まで逃れてきた少女のおりんは、
錺職人を目指しているお園の住む長屋で暮らし始める。
根っからの世話焼きで、おりんのことを家族のように大切にしてくれるお園。
束の間の幸せに浸るおりんだが、何者かがお園に矢を放ったことでその暮らしは一変してしまう。
もう二度と、自分のせいで人が死ぬところを見たくない。
今度こそ大切な人を守ると心に決めたおりんは、
長屋の隣人である武士の佐伯とともにお園の周囲に目を光らせる。
西国から追っ手が迫っていることも知らずに――。