イノベーションとは『創造的な破壊』だ!
宇宙飛行に革命を起こし続けるイーロン・マスクは、
予定調和に凝り固まった日本社会へのアンチ・テーゼなのか。
――野口聡一(宇宙飛行士)
再使用ロケットの実現、国際宇宙ステーションへの人員輸送など、数々の偉業を成し遂げ、
「第二の宇宙時代」を象徴する存在となったスペースX。
それは、創業者イーロン・マスクのヴィジョンだけでなく、
身を粉にして働いた数千の人々の献身があってこそのものだった。
ロードムービーさながらのロケット陸上輸送作戦、
海洋冒険小説もかくやというドラゴン宇宙船の回収プロジェクト、
陰謀論の誘惑に抗いながら謎解きに挑んだ発射台での爆発事故、
そしてSFの世界を現実にしたかのようなロケットの帰還と見事な着陸。
しかしスペースXの物語はこれで終わりではない。
火星移住という野望を達成するために、死角はないだろうか。
『LIFTOFF』につづき著者は、スペースXの内部に分け入り、 輝かしい偉業の舞台裏に迫るとともに、その行く末を占う。
解説:秋山文野(宇宙ジャーナリスト)
■本書に寄せられた賛辞
スペースXの成功を裏で支えたヒーローたちの物語。
――アンディ・ラプサ(ストーク・スペース共同設立者兼CEO)
イーロン・マスクという、際立って大胆で優れたビジョナリーに率いられた企業による、
おそらく世界で最も注目に値する野心的な物語を伝えている。
――ジャレッド・アイザックマン(民間人のみによるはじめての宇宙飛行で船長を務めた人物)
ロケットの再使用や新たな宇宙時代の幕開けをもたらした原動力や決意がはじめて語られる。
――ロリ・ガーバー(元 NASA副長官)
わたしはスペースXの興隆を20年近くにわたって追ってきたし、
そのロケットと宇宙船で宇宙へ飛んだこともある。
だが『REENTRY』を読んではじめて、スペースXがどれほどの苦難を乗り越えて
新たな宇宙時代を切り拓いたかがわかった。
――マイケル・ロペス=アレグリア(宇宙飛行士)
■目次
プロローグ 2023年4月20日、テキサス州サウス・パドレ島
1 凶暴な野獣 2008年11月22日、テキサス州マクレガー
2 寄せ集める 2009年1月10日、フロリダ州ケープカナベラル
3 フライト・ワン:軌道到達 2008年9月28日、オレゴン州ベンド
4 フライト・ツー:ドラゴンのデビュー 2010年9月、カリフォルニア州ホーソーン
5 フライト・スリー:ドラゴンの必死の飛行 2012年5月25日、テキサス州ヒューストン
6 もう戻ってこない 2012年1月、カリフォルニア州ヴァンデンバーグ空軍基地
7 荷船を準備せよ 2014年4月20日、カリフォルニア州ホーソーン
8 悲劇と勝利 2015年6月28日、カリフォルニア州ホーソーン
9 Fの2乗と、AMOS-6の悲劇 2009年2月、バージニア州マクリーン
10 火星の値段 2016年9月、メキシコ、グアダラハラ
11 ファベルジェの卵 2008年12月、ワシントンDC
12 第二の宇宙時代 2019年4月20日、テキサス州リーグ・シティ
13 スチームローラー 2018年2月5日、フロリダ州ケネディ宇宙センター
エピローグ
■本文より
長きにわたり、スペースXは無視され、そんなことはできるはずがないと言われてきた。
いま、彼らはそれを達成し、ライバルたちは金網越しに覗きこんで笑ったりしていない。
ライバルだった者たちはあっけにとられてはるか上方を見上げている。
「わたしたちは遠くまで来た。それはたしかね」。
わたしがかつて軽視されていたことを質問すると、グウィン・ショットウェルはこう答えた。
「『打ち上げに成功するはずがない』って言われていたけれど、わたしたちはファルコン1を飛ばした。
『本物のロケットを打ち上げられるはずがない』と言われれば、ファルコン9を飛ばした。
すると、『ドラゴンを軌道へ運べるはずがない。ドラゴンは宇宙ステーションには決して達しない。
ああ、ロケットの回収なんてできるはずがない。ロケットを再使用できるはずがない』って。
まだ何か言いたいことある? ってところね」