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香りで読みとく『源氏物語』──薫物から源氏香まで、平安王朝の雅びへと誘う一冊平安の宮廷に漂う、ほのかな香の余韻。仏教の隆盛とともに渡来した薫香は、平安初期には宮廷や貴族の邸宅へと浸透し、王朝文化の一端として定着していきました。『源氏物語』が生まれたのは、まさにその文化がもっとも成熟した平安中期。文字、絵画、音楽、建築、造園といった芸術が形式美の極みに達し、「雅び」という美意識が時代を彩っていた頃です。香りは、そうした「雅び」を構成する、もっともとらえ難く、それゆえもっとも重要な要素のひとつでした。衣にたきしめる「衣香」、紙にうつす香り、室内にただよわせる「空薫物」、仏前にそなえる「名香」など、香りは日常の中に息づき、身分や教養、個性を表現する手段でもありました。後年、こうした香りの文化は、香道において「源氏香」に結実していきます。『源氏物語』において、香りは登場人物の心の揺らぎや人間関係の機微を伝える鍵として巧みに用いられています――ふと漂う香りから光源氏の訪れを察し、動揺する藤壺。落ちぶれてもなお、稀有な香木の香りをまとう末摘花の高貴さ。薫君の移り香を中君がまとっていることに気づき、ふたりの関係を疑う匂宮。護摩の芥子の香りから、自らが生霊となっていたことを悟る六条御息所。「光る君」の二つの面をそれぞれ継承した「匂宮」と「薫君」のまとう香りの違い。本書は、香りの描写から『源氏物語』の奥深い世界を繙いていきます。『源氏の恋文』『新訳源氏物語』全四巻など源氏関連の著作を多数執筆し、香道研究に従事して『香道蘭之園』の校訂・解題も手がけた著者による、珠玉の一冊。(解題:毬矢まりえ、森山恵)[本書の内容]序にかえて――源氏物語と薫香源氏の世界と香り薫香への道程六種の薫物たきもの拾遺匂宮と薫君「源氏香」について朝日選書版あとがき『薫集類抄』(群書類従版)より参考文献一覧解題 毬矢まりえ、森山恵本書の初版は、1986年に求龍堂から出版されました。文庫化にあたっては、1992年に朝日選書として朝日新聞出版より刊行されたものを底本としました。
9784065416761
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