良かったね!、と最難関の最終トンネルをくぐった感のラストへの流れ。
記憶が蘇って来て、過去の日々をなぞりそうになる恐怖心からなかなか抜け出しきれなかった彼。新しい日々の新しい人間関係や新しい住環境に身を置いたことによる、視点の転換を反映し
た脱出も理解できる。
気づけて良かった。何がきっかけになるか、それは人に依るかもしれないがこれで十分の転換点と思える。彼は二度目だからこそ、気づけた。サラは星への願いを家族作りへのこだわりにより自力で実現させた。これまでは、ダブらせてしまって苦しかった彼が、ダブらせることで、反対にヒロインの状況に客観的想像力が持って行けた。
いつの間にか、サラ版の結婚生活へ気持ちの比重がついていたのだろう。
もう二人は大丈夫とひとまずは思える終わり方。
彼はちゃんと父親になれる。あとの光景は想像できるので、これ以降の描写を省いたのはドラマツルギーとして大いに有りかと。
これからもフラッシュバックはあるかもだが、ここを乗り越えたのは大きい。進まないように見えて進めてこれたのだ。
サラは、精一杯父親を勤めようとする彼の努力を見ることが出来るだろう。
夫も父も双方をキチンとやった彼なら今回も成れるからだ。サラを愛しているのであるし。
実際、サラは自分のことしか考えないタイプではなかった。彼の苦しみを知りながらも、それでも、二人の子を失った彼の、自分との愛の証を願うわけで。
このような経過を辿らなくでも、妻を愛するようには子を愛せない父親もいるのだ。そんなことを思い巡らすと、あれほど辛い死別の地獄を見た彼が再び誰かを愛せるようになってよかったねと思うし、流れ星への祈りが遂に届いたサラの胸中が、読み手のこちらの心にキューッと来る。解放された殯の昇華みたいに思えて、深く安堵してしまう。
「私はダイアンじゃないわ。そう、ダイアンの代わりでもない。」
この涙の反撃シーンは良かった。
居場所の感じられなった二人に新しい居場所の主張が開始されている。
一本調子に関係が良い方向に進められる訳じゃない。消化して近づき合っても、残る記憶がまだ苦しみの素。ぶつかって一歩、またぶつかって一歩と、亡妻への愛という壁を乗り越えても、亡くした子供達という壁を次は乗り越えねばならない。都度都度傷つくサラ。が、その都度彼も変化した。
女の子誕生は作者の終わらせ方の意思と見た。
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