ファンタジーなしの骨太な男性同士の恋愛。表紙がすでに平成初頭の雰囲気にいざなってくれます。2人の視線がいいですね。
「潮騒」という言葉は、古くは万葉集にも載っているようです。この言葉に想いを馳せる日本人は多いのかもしれません(三島由紀
夫の名作しかり)。
男性同士が愛し合うことの制約や痛み、焦がれ、諦め、願いなどがせめぎ合い、文字どおり潮騒のように描かれています。しかも2人は教師。そして境遇も性格も考え方も何もかも違う。それでも相手を想う心だけは誠実であろうとする姿に、恋はこんなにも人を変えるのだと胸が熱くなりました。
1994年(平成6年)という数字に、自分の人生がどう重なるかで、このお話の読み方が少し変わるかもしれません。この時代を表すいろんなアイテムが出てきます。それと同時に思い出される2度と戻らない日々、抱いていた思い、出会い別れていった人たち…。どんなにお金を積んでも戻ることの出来ない過去に、胸が疼きます。
昭和も平成も遠くなりにけり…です。
時代に埋もれゆくものもある、残り続けるものもある。数多ある人の想いなどはきっと前者なのでしょう。けれど、時代が流れても変わらず人の心を打つのは、こういった消えゆく想いなのかなと思いました。ファンタジーなしと書きましたが、恋は幻想なのでしょうか。
最後の一コマまで粋な作品でした。
レビューを書いてくださり、心から感謝いたします。
*1994年以降に生まれた方が読んだとしても、十分に楽しめますのでどうぞご安心を。ちなみに私はソックタッチが欠かせなかったルーズソックス世代です笑笑
もっとみる▼