初めて恋した人は、従姉妹と婚約した。
いくら恋しても、その人は自分ではなく他の人と家庭を築くのだ。
そう、婚約者のいる人をいいなと思ったりしたことがあると、決して振り返ってもらえない現実が立ちはだかって、片想いなどとは比べものにならない
どうしようもないものを感じるものだ。ヒロインの場合は、挙式で幸せな二人の姿を見せつけられるという、より過酷な試練があった。知らない相手だとどんな人なのかを確認したくなるのが人情だけれど、このケースはキツい。
でも、もっと彼女に辛かったのは、二人の結婚後。ヒロインは、性格が良い為に、自分のできる精一杯をやろうとしたが、読者の立場には、何でそんな嫌なタイプの女にそこまで?と。まして、却って酷く当たられて。
彼は、真実を知らなかった、というよりも、知ろうとしなかった、という方が近い。
見ようとしなかった、というよりも、見たくなかった。
意識していたから。
ヒロインは職場で彼を垣間見ては喜びと苦しさを味わう。従姉妹の死。彼はヒロインを憎み、許さない。
ヒロインは自分を責める。キャラが善い人というのは、相手に問題があるとは思わない。ヒロインのこれ迄のあんまりな境遇を考えると、読者的にもういい加減そんなスパイラルから早く引っ張り出してあげたくなるわけだ。
彼は、よくある、結婚のときに、余り女を見る眼がまだ出来てなかったタイプ。え?、彼女、かなり意地悪タイプなのにいいと思ってるんだ、と、人を好きになるってことは、何でもよく見えちゃうんだなぁというパターン。それだけ未熟だったということ。
婚約は他人を巻き込む決断。当人の人生は他人は変えられないから、そのまま次のステップに進んでいってしまって、生活を続けていくうち漸く相手の本当の姿が判る。簡単には、やめた、こっちにするなどと鞍替えできないのが人生。
これ迄憎しみをぶつけられ、冷淡過ぎるほどに扱われた訳が解って、手術後、失恋さえ修復の道へ。
彼女の人生は一変、日が差したよう。彼のほうから、ヒロインへの本当の気持ちを吐露してきた。
人はなかなかその時々の本当の気持ちのままには動けないものであるけれど、気持ちが通い合って良かった。これ迄傷つけられた心が少し癒えただろう。
もっとも、心優しい、「許し」のヒロインに代わり、読者としては、彼女を踏みつけたことに対する許せない気持ちが叔父一家と彼に残る。
もっとみる▼