これ迄の自分の狭い了見から、別の視点が入ってくる。恋愛感情が混ざると、これまで見たことのなかった視界が開けてきますね。そして誠実に相手を見ようとすると、他人の噂で悪い評判を立てられる相手を自分だけは信じられる。
でも、他人の言葉に振り回さ
れることも、悲しいけど、やっぱりあります。きちんと謝り自分の気持ちを伝えるという行動に出るヒロインは、すくすく育ったお嬢さんで、潔さや正義感まで感じられて生真面目なくらいなところが微笑ましくなります。
時代の制約や女性であることの不自由さも作品の背景として伝えた上で、他人がなんと噂しようと真実の姿を見ることの大切さが表されています。また他人から批判を浴びても、信条を大切にすることも。
手練手管に長ける男性が生まれて初めて本当の恋の相手に巡り合うパターンはたくさんありますが、このお話から、愛するということは、愛を受けて育ったものには自然なことでも、知らずに育ったものにはなかなか厄介なものなのだと、その根深さが終盤に公爵の告白の形で説明されます。
そして、それでも、手をつないで光の中へ踏み出すその姿を目撃することになる読み手として、新たな世界の扉を開いた明るい出発の二人を送り出す気分のよさが残ります。
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