マーカスとジェンマにはそれぞれに毒を吹き込む蛇がいた。気の毒だと同情はする。それでも、物語の中でいちいちマーカスの一挙手一投足に翻弄されるジェンマには少々苛立った。キャリアのため出世のために一途なのは理解できるが、余裕の無さや客観的に周りを
見るという事が欠落しているジェンマには魅力が感じられない。シングルマザーは子供のために働き高収入を得なければならないことは理解はできても、父親である男からも金銭を受け取ることも子供のためなはずなのを分かっていない。そんな女性でも懸命に働き編集長を目指すのは当然としても、それが相応しいとは片腹痛い。器ではないだろうと思える。登場する人物それぞれに希望することがあってその為にあらゆる手段を講じて相手に挑んでいる事を鑑みれば、ジェンマは敗北者であると言える。勝ち進まなくては欲しいものは手に入れられないのだ。ジェンマにはリーアムがいることを武器にもしようとせずに自分の立身出世のみに拘り続けている時点で、ソフィアにマーカスを譲ったも同然。戦わずして負けを認めたのだ。イジイジとしているのは彼女の勝手だが強敵を前にしているのだからもっと手段を考えるべきだった。マーカスが欲しいのなら。そして、マーカスも自分からはなかなか動かない。なぜなら彼自身は、女性のほうから寄ってくるのだから自分を愛しているならジェンマのほうから懇願してこいという傲慢さがある男性だから。お互いの性格や考え方と状況判断の違いによってすれ違っていたのだ。毒を吹き込むような者がいなくても、二人の違いは大きいと思える。ジェンマの母が言っていた「インテリにしては/あなたは/とんでもなく/くだらないことを/いうわね」良く分かっていらっしゃる。ジェンマに足らないところはそこです。それをもっと考えさせるような展開を読みたかった。そんな物語だった。
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