テューダー朝が好きで、史実とギャップが多いんだろうなと不安に思いつつ読みましたが、かなり忠実に描けてて驚きました。ヘンリー8世やクロムウェルは肖像画そっくり。メアリー1世やアン・ブーリンやジェーン・シーモアは、人物の肉付けが魅力的で、当時の
女の立場の弱さ悲しさを伺い知れます。薔薇戦争後の不安定な情勢でヘンリー8世が男子継承者を求めるのは当然だと思うので、ちょっとヘンリーを擁護したい部分もありますが…狂っていく様は良い感じに描かれていて嬉しかったです。この時代を扱う作品は王族・宗教家・貴族が多い中、ただのジェントリ階級(側近セシル)からの視点も斬新でした。史実のセシルもプロテスタントだけど反カトリックって程ではないので、どちらの宗教も理解出来て、故に読者の共感できるレベルの葛藤が起きたりして、良いバランスだと思います。もっと史実通りに行こうとすると、教科書のようになってしまうので、セシルの成長に合わせた物語の進行と省略も丁度良いです。年表を追うのではなく人物が動いて話が進むので、歴史が苦手な方でも見易いかと思います。是非読んで欲しい名作です。
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