「面白いマンガを描きたい」。
マンガ家を目指す方なら、誰もが一度は考えることではないでしょうか。
では、読者の心をつかむ「面白いマンガ」には、どんな共通点があるのでしょう?
シーモアコミックス編集部で日々マンガづくりに携わるマンガ編集者に聞いてみると、その答えは意外とシンプルでした。
必要なのは、新しい驚き。心を動かす感情。そして共感できるキャラクター。さらに欠かせないのが、マンガ家自身の「これを描きたい」という強い思いです。
今回は、シーモアコミックスのマンガ編集者2名が、人気作品誕生の裏側など具体的なエピソードを交えながら、読者の心をつかむマンガの共通点や、マンガ家ならではの個性を作品に活かす方法について紐解いていきます。
「面白いマンガ」には、新しい驚きと感情の動きがある
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まず、面白いマンガに欠かせないものとして挙げられるのが、新しい驚きです。
「こんな設定は初めて見た」「こんな展開になるとは思わなかった」など、読者が作品を通して新しい発見や体験ができることは、大きな魅力になります。
とはいえ、「新しい」とは、必ずしも誰も見たことのない斬新なアイデアというわけではありません。
身近な題材でも、読者が「知らなかった」「そうだったんだ」と思える視点や発見があれば、それは十分に新鮮な驚きになります。
そして、もう一つ重要なのが、読者の感情を動かすこと。
楽しい、切ない、うれしい、怖い、ドキドキする―。読者が物語の中でさまざまな感情を味わい、心を動かされることが、作品の面白さにつながります。
たとえばホラーなら、「怖いけど、続きが気になる」。少女マンガなら、「この先どうなるの?」というドキドキや、「キュン」とする瞬間など、「もっと読みたい」と思わせる瞬間が、ページをめくる力になります。
そこには、ストーリーだけでなく、キャラクターの表情やセリフ、コマ割り、光や影など、マンガならではの演出も大きく関わります。
「話が面白い」「絵が上手い」という一つひとつの要素だけではなく、それらが組み合わさることが、読者の心をつかむ「面白いマンガ」につながっているのです。
読者の感情を動かす作品は、マンガ家だけの力で完成するものではない
マンガ家が描いたネームを、読者の目線から読み、「ここでもっと感情を動かせないか?」と考えるのも担当編集者の大切な役割です。
たとえば、「ここは少し感情が伝わりにくいかもしれない」「もう少し怒りを強くしたほうが、読者の心に響くのでは?」など、具体的な提案をしながら作品をブラッシュアップしていきます。
完成した原稿をチェックするだけではなく、「読者はここでどう感じるだろう?」とマンガ家と一緒に考え、心が動く瞬間をつくっていく。
それが、担当編集者とマンガ家が二人三脚で作品をつくる理由の一つなのです。
今、読者が求めているのは「身近な共感」
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読者の心をつかむためには、今どんな作品が支持されているのかを知ることも欠かせません。
シーモアコミックス編集部では、サイト内のランキングやレビューなどを参考にしながら、読者の反応やトレンドを日々チェックしています。
マンガのトレンドは目まぐるしく変化していますが、今なお強く支持されているのが、身近な人間関係や日常の小さな幸せを描いた「共感できる作品」です。
情報があふれ、忙しい毎日を過ごす現代だからこそ、自分のすぐそばにあるような物語に、安心感や共感を求めているのかもしれません。
「自分とちょっと似ている」が、キャラクターを好きになる入口
こうした「共感」は、キャラクターづくりにも表れます。
読者がキャラクターと完全に同じ性格である必要はありません。たとえ自分とはかけ離れたキャラクターでも、「ここだけは自分と似ている」と思える部分が一つあれば、そこから感情移入が生まれます
だからこそ、キャラクターにはあえて「身近な要素」を一つ入れてみることもおすすめします。
完璧な人物ではなく、少し弱いところがあったり、「分かる」と思える部分があったりすることで、キャラクターはぐっと身近な存在になります。
このキャラクター、なんだか気になるな、という小さな共感が、作品を読み進めるきっかけになるのです。
トレンドを狙うなら、スピード感も武器になる
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一方で、読者のニーズを意識することと、流行しているものをそのまま描くことは同じではありません。
特に近年は、トレンドの移り変わりが非常に速くなっています。
以前は一つのジャンルが2〜3年ほど続くこともありましたが、最近は大きなブームが起きたと思ったら、次の波がすぐにやってくる。人気が出た作品を見てから企画を考えていると、作品が完成する頃には、すでに読者の興味が次へ移っている可能性もあります。
だからこそ、「これは来そう」と思ったときに、すぐ動くスピード感が重要です。
ただし、すべてのマンガ家がトレンドを追う必要はありません。
流行を素早く取り入れて作品にするタイプが合う方もいれば、自分が描きたいものを時間をかけてじっくり作り上げたいという方もいる。
どちらが正解ということではなく、自分がどんな作品づくりをしたいのかを知ることが大切です。
「流行っているから」だけではない。自分の強みを武器にする
もしトレンドを取り入れた作品を描くのであれば、もう一つ大切なのが、「自分の強みを掛け合わせること」です。
たとえば、ストーリーを組み立てることが得意なら、伏線や展開の面白さを活かせる作品にする。キャラクターの心情を描くことが得意なら、繊細な心理描写が魅力になる物語を考える。セリフ回しに自信があるなら、印象に残る会話やテンポの良さを武器にする。
同じトレンドを扱っていても、マンガ家によって作品の印象が変わるのは、そこに「その人ならではの強み」があるからです。
「読者が求めているもの」と「自分が得意なこと」。
その二つが重なる場所を探すことが、単なる流行の後追いではない「そのマンガ家にしか描けない作品」につながっていくのかもしれません
読者の反応は、作品づくりの確かな手応えに
マンガをつくるうえで、読者の反応を知ることも欠かせませんが、読者の「こうしてほしい」という声の通りに作品の展開を変えるわけではありません。
むしろ大切なのは、自分たちが考えた作品の方向性が、読者にどう届いているのかを確かめることです。
そのことがよく分かる作品が『東郷家へ嫁いだ話』(著:清水奏良)です。
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担当編集者:【な】
「この作品は少女マンガのジャンルですが、ミステリーやホラー要素のある展開も結構あって、各話のラストには必ず少し怖い様子を入れたり、続きが気になる展開を入れてもらっています。
読者さんのコメントを見ていると、『この先がどうなる!?』という声をたくさんいただいていて、王道の少女マンガっぽくないチャレンジをして下さってよかったなと思いました。
どの作品も、方向性に迷うことはあります。そんなとき、「続きが気になる」という読者の声は、「この作品でやろうとしていることは、ちゃんと届いている」という確信につながりますし、マンガ家さんにとっても自信になります。」
「この人にしか描けない」は、マンガ家の「好き」から生まれる
これからの作品づくりでは、「自分自身が面白いと思うもの」「自分が描きたいと思うもの」を大切にすることも重要です。
マンガ家ならではの個性は、ときに「こんなものを描いてみたい」という、ごく個人的な興味から生まれます。
「これが描きたい」が、作品の原点になる
『クリーニングくじらー人生はときどき、洗いなおしてー』(著:岡畑まこ)も、マンガ家の「描きたい」という想いが詰まった作品です。
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担当編集者:【な】
「この作品は、岡畑先生の「シワのない、パキッとした白シャツの少年を描きたい」という思いからスタートしました。
そこからクリーニング屋さんが舞台になったり、いろいろな要素がつながっていきました。そういう発想や「これを描きたい」という気持ちがなければ、この作品は生まれていなかったと思います。
作品をよりリアルなものにするため、岡畑先生ご自身がクリーニング店を取材して、そこで働く人や、服を預けに来る人について話を聞き、実際のクリーニングの様子も観察しました。
さらに、作品に登場するヴィンテージドレスのエピソードには、岡畑先生がかつて結婚式場でアルバイトをしていた経験も生かされています。
取材させてもらった店舗の方からも、実際にマンガを読んでみて「本当にリアルでびっくりした」と仰っていただきました。
そのリアルさが読者さんに響くのだと思いますし、マンガ家さんの経験や実際にみて感じたことが作品に反映されていることは大切なんだということを、この作品から学びました。」
マンガ家自身が気づかない「強み」は、担当編集者が見つける
自分の強みを自分自身で見つけるのは、簡単ではありません。
「絵を描くことは好きだけど、自分のどこがいいのか分からない」といった悩みを持つマンガ家も少なくありません。
そこで担当編集者は、マンガ家自身も気づいていない魅力を、客観的な視点から見つけたり「ここを伸ばしたら、もっと魅力が出る」というポイントを伝えながら、そのマンガ家ならではの強みを一緒に育てていきます。
また、マンガ家の得意分野や作品との相性を考えながら、より魅力を活かせる方向へ導くこともマンガ編集者の役割です。
マンガ家の「描きたい」を尊重しながら、「この人だからこそ描けるもの」を見つけていくことに、マンガ家とマンガ編集者が二人三脚で作品をつくる意味があるのかもしれません。
マンガ家の「人柄」そのものが作品になることも
マンガ家の個性は、絵柄やストーリーのアイデアだけに表れるものではありません。
その人が何を大切にしているのか。どんなことに心を動かされるのか。
そうした価値観や人柄そのものが、作品の個性になることもあります。
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担当編集者:onoryou
「24時間スーパーを舞台にしたこの作品は、企画が固まるまでに何本もの1話ネームをボツにするなど、試行錯誤を重ねてつくられました。
そんな中で、著者の鈴木先生が話していた「誰も傷つけることなく、優しくありたい」という思いが、作品の方向性を決めるきっかけになりました。
深夜のスーパーで働く人たちに焦点を当て、普段はなかなか描かれることのない彼らの日常を描きながら、キャラクターの何気ない行動や想いが、そっと誰かの心を温めるような物語を紡いでいます。
鈴木先生ご自身の「優しさ」が色濃く反映されているからこそ、この方じゃなきゃ描けない作品だと感じています。」
技術やアイデアだけではなく、マンガ家自身の価値観や人柄まで作品に宿るというのも「個性」なのかもしれません。
面白いマンガを描くために、まず大切なのは「描き切る」こと
これからマンガ家を目指す方にとって、まず大切なのは「これを描きたい」という思いを持ち、1本の作品を最後まで描き切ることです。
ここまで読んで、「自分らしい作品をつくらなければ」と思う方もいるかもしれません。でも、最初から完璧な個性や才能を見つける必要はありません。
まずは、自分が描きたいと思ったものを、最後まで形にすること。そこからすべてが始まります。
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担当編集者:onoryou
「マンガ作りで大切なのは「これを描きたい」「描き切るんだ」という気持ちだと思っています。『私はソレを運命と呼びたい』は、著者の桜井真優先生が何年もあたためてきた企画が、やっと形になりました。
マンガを描くことは、一人で映画を1本つくるようなもの。アイデアを考え、キャラクターをつくり、ストーリーを組み立て、絵にして、完成させる。決して簡単なことではありません。
だからこそ、たとえ自分では「まだ上手くない」と感じていても、1本を描き切ること自体に大きな価値があります。
そして、その先には読者がいるんだということを大切にしてほしいですね。読者の期待に応えること、いい意味で期待を裏切ること、それが面白いマンガを描く大前提なのかなと思います。」
この「まず1本を描き切る」という考えから、シーモアコミックス編集部では新人マンガ家向けの読切マンガレーベル「モアコミegg」もスタートしています。
この経験が、自分の強みを知るきっかけになったり、次の作品への課題や新たなアイデアにつながったりするはずです。
▼「モアコミegg」創設秘話はこちら
迷ったときこそ、マンガ編集者を頼ってみて!
マンガを描いていると、「これって本当に面白いのかな」「この作品でいいのかな」「自分が何を描きたいのか分からない」と迷う瞬間がきっとあります。
そんなときは、一人で悩み続けず、まずは誰かに聞いてみるのも一つの方法です。
「私ってどんな人だと思う?」と友人や家族に聞いてみる。あるいは、自分が好きなマンガを振り返って、「なぜこの作品が好きなんだろう?」と考えてみる。
いくつかの作品に共通する「好き」を探していくと、自分が何に心を動かされるのかが見えてくることがあります。
そして、もう一人、頼ってほしいのがマンガ編集者です。
マンガ編集者は、作品を編集するだけの存在ではありません。マンガ家と一緒に悩みながら、作品の魅力を見つけ、より面白くする方法を考えるパートナーです。
「自分では気づいていないけれど、実はここが魅力だった」 というような発見を、マンガ編集者との会話から見つけられることもあります。
誰かに話してみることで、自分だけでは見えなかった作品の魅力や、「この人にしか描けないもの」が見つかるかもしれません。
シーモアコミックス編集部には、マンガ家一人ひとりに寄り添いながら、一緒に作品をつくっていくマンガ編集者がたくさんいます。
「こんなマンガを描いてみたい」という思いがあるなら、まずは一歩踏み出してみませんか。
「これを描きたい」という思いがある方を、シーモアコミックス編集部はお待ちしています!
出張編集部では、実際にマンガ編集者に作品を見てもらい、魅力や改善点について直接話すことができます。「プロの意見を聞いてみたい」という方は、ぜひ気軽に参加してみてください。
出張編集部の流れや持ち込みのポイントは、こちらの記事で詳しく紹介しています。
【編集部コラム〉出張編集部とは?事前準備と当日のやりとり|マンガ編集者と直接話せるチャンスを活かそう!
今回お話しを伺ったシーモアコミックス編集部のマンガ編集者
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【な】
担当ジャンル:少女、女性、TL、少年
読者さんへ「面白い」「ときめき」「感情に寄り添う」をお届けする作品作りのお手伝いをさせてください!
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onoryou
担当ジャンル:女性、少女、TL
マンガを描く動機は人それぞれだと思います。だからこそ、ひとりひとりに寄り添った編集者を目指しています! 二人だからこそ見える景色を目指して、一緒に作品を作りませんか?
▼ 今すぐ作品を見てもらいたい方へ
「Web持ち込みフォーム」から、作品データをお送りください。
新作・既作は問いません。
ご投稿頂いた作品はすべて拝読し、採用者にのみご連絡させていただきます。
▼ まずはマンガ賞に応募してみたい方へ
「コミックシーモア毎月マンガ賞」は毎月末が締め切りです。
今手元にある同人誌・ネーム・SNSのURLでも応募できます。
全賞に連載権が付くので、受賞した瞬間にデビューへの道が開きます。
▼ 作品を読んでみたい方へ

『東郷家へ嫁いだ話』

『クリーニングくじら ―人生はときどき、洗いなおして― 』

『満ちるまで雨宿り』

『私はソレを運命と呼びたい』