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マンガのプロットはこう生まれる|マンガ家のアイデアを引き出す編集者のヒアリング術

編集部コラム
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「面白いマンガ」は、どのように生まれているのでしょうか。

読者の心を掴むストーリーや魅力的なキャラクターの土台となる“プロット”は、マンガ家がひとりで作り上げているイメージを持つ人も多いかもしれませんが、じつは、マンガ編集者との対話や雑談、何気ない会話の積み重ねの中から作品の方向性が形づくられているのです。

今回は、シーモアコミックス編集部で数多くの作品を手掛ける副編集長に、プロット制作のリアルな流れから、マンガ家とのコミュニケーション、アイデアを引き出すヒアリング術について詳しく聞いてみました!

マンガのプロットとは?

マンガのプロットとは、物語の設計図となる「あらすじ」のことです。

プロットづくりは、いわばマンガ制作の土台となる工程。作品全体の流れやエピソード、キャラクターの感情や行動を整理しながら、「どんな物語を描くのか」を形にしていきます。

読者を惹き込めるかどうかを左右する重要な部分でもあり、作品の方向性を決める大切な役割を担っています。

ただし、その作り方はマンガ家によってさまざまです。

数行のアイデアメモからスタートする人もいれば、世界観設定やキャラクター資料、長文の脚本レベルまで細かく作り込んでくる人もいます。

だからこそマンガ編集者には、それぞれのマンガ家の思考や制作スタイルに寄り添いながら、アイデアを引き出し、整理し、作品として成立する形へ導いていく力が求められるのです。


プロットはどう完成していく? 実際の制作フローについて

新しい作品づくりは、まず「どんな作品を描くか」という打ち合わせから始まります。

今回取材した副編集長の場合、最初3〜4行程度の作品全体のあらすじを2〜3案出してもらって、作品の方向性を決めていきます。

「この企画でいきましょう!」と決まったら、1話のプロットを書いていただき、それをもとに「こういった案はいかがでしょうか」という打ち合わせを重ねながら、プロットを完成させていきます。

流れとしては、


1. 1話のプロットを作成
2. 担当編集者が確認・フィードバック
3. 打ち合わせを重ねながら修正
4. プロット完成

というように、制作が進行します。プロット完成までは半月程度で進むケースが多いです。

一口に“プロット制作”と言っても、進め方はマンガ家によって本当にさまざまです。


・イメージイラスト+簡単なコメントで共有する方
・A4数枚にわたる脚本形式で提出する方
・プロット形式が苦手で、口頭打ち合わせから直接ネームへ進む方

など、さまざまなスタイルがあるため、マンガ編集者は「どうすればマンガ家さんが一番アイデアを出しやすいか」を一緒に探ることを大切にしています。

◼️プロットから生まれた人気作品!『ウルの森の魔女』(著:そうだすい)

「コミックシーモア」で連載中のダークファンタジー&ミステリー恋愛漫画『ウルの森の魔女』(著:そうだすい)は、プロットの段階から世界観や設定が非常に緻密に作り込まれていました。

打ち合わせの中で「今はファンタジー作品への注目度が高まっている」という読者傾向についてお話ししたことをきっかけに、そうだすい先生が本作を描いてくださいました。

初稿として提出いただいたプロットは、驚くほど完成度が高く、登場人物の設定やイメージイラストまで細やかに構築されていました。

プロットの時点ですでに作品としての魅力がしっかりと伝わってきて「これは絶対に面白くなる」と感じました。

そのため、大きな修正を加えることなく「ぜひこのまま作品化しましょう!」という流れで制作が進んでいきました。



画像:『ウルの森の魔女』(著:そうだすい)の、プロット段階でのイメージイラスト

完成度の高いプロットとはいえ、もちろんそのまま執筆開始となるわけではありません。担当編集者との打ち合わせを通して、細かな調整を重ねていきます。

画像:『ウルの森の魔女』(著:そうだすい)のプロット

プロット内の赤字部分が、担当編集者による修正提案です。

副編集長の場合は「キャラクターの言動にブレがないか」「ストーリーに矛盾が生じていないか」「読者に伝わりづらい部分はないか」「さらに面白くできる余地はないか」といった点を重視して、プロットを確認しています。

ただし、編集を進めるうえで何より大切にしているのは、マンガ家の世界観や個性を損なわないことです。

「ここは少し分かりづらいかもしれません」と率直な意見を伝えながら、作品の魅力を活かして、より読者に届く形へとブラッシュアップしていきます。

打ち合わせは“雑談”が中心? アイデアを引き出す質問術

マンガのプロット作りというと「面白いアイデアを考える作業」というイメージを持つ人も多いかもしれません。

しかし、実際は、完成されたアイデアが最初から出てくることは少なく、数行のあらすじや「こんな雰囲気を描きたい」という断片的なイメージだけのこともあります。

そこで、マンガ編集者が、マンガ家の頭の中にある“まだ言葉になっていないもの”を引き出しながら、作品をかたちにしていきます。

◼️最初に聞くのは「どんな作品が好きですか?」の質問

マンガ家との打ち合わせでは、最初から「どんな作品を描きたいですか?」と聞くわけではありません。

まずは「どんな作品やキャラクターが好きか」「どんな設定に惹かれるか」といった、“好き”の方向性を探るところから始めます。

さらに話題は、マンガに限りません。
趣味の話や日常の出来事、最近気になっていることなど…。一見、作品づくりとは関係のない雑談をすることも多いです。

そんな会話の中から見えてきた、マンガ家が「好き」と感じるものを広げていくような感覚で、企画を考えていきます。

また、マンガ編集者から企画を提案する時は、マンガ家がこれまでに出した作品や同人誌、過去の商業作品などを確認して「この方はもっとこういう作品も描けるのでは」と感じた部分をヒントにすることもあります。

◼️雑談から世界観が広がっていくことも

マンガ編集者とマンガ家との打ち合わせでは、最初から「こういうストーリーを書いてください」と細かく方向性を決め込むのではなく、雑談のような会話を重ねながら、一緒に世界観を育てていくように作品を形にしていくことも少なくありません。

副編集長によると、異世界ファンタジーや中世ヨーロッパ風の作品を考える際には、「この世界ではどうやって領地経営をしていくのか」といったテーマから話が広がっていったことがあるとのこと。

たとえば、「昔の日本ではどうやって水路を作っていたのか」「産業革命はどのように起きたのか」といった歴史の話題をもとに、日本古来の技術を異世界の設定に応用できないかを一緒に考えていくこともあります。

さらにそこから、「その土地ではどんな作物が育つのか」「温泉文化は存在するのか」といった細かな設定へと発想が派生し、世界観がどんどん立体的になっていくのだそうです。

こうした何気ない会話の積み重ねが、その作品ならではのリアリティや奥行きを生み出しているのかもしれません。

◼️何気ない会話から作品が誕生!『十億のアレ。~吉原いちの花魁~』(著:宇月あい)

『十億のアレ。~吉原いちの花魁~』(著:宇月あい)も、マンガ編集者とマンガ家との何気ない会話から生まれた作品のひとつです。

宇月あい先生との打ち合わせの中で、担当編集者から「現代の吉原を描くのはどうですか?」という提案が出たことがありました。

しかし当初、宇月あい先生は“現代の吉原”=キャバクラのような場所を想像してしまったため、あまりしっくり来ていなかったそうです。

そこで担当編集者が「“吉原”という場所を現代化するのではなく、“吉原の世界観そのもの”を現代に持ってくるのはどうでしょう?」と提案したところ、その一言をきっかけに「現代に吉原が存在していたら?」という発想へと広がり、作品の世界観が一気に形になっていきました。

このように、プロット作りは最初から完成されたアイデアを持ち寄るだけではありません。雑談の中で生まれた違和感やひらめき、何気ない一言の掛け合いが、作品の核になることも少なくないのです。

マンガ家の“描きたい”をどう引き出す?マンガ編集者の「聞く力」

マンガ編集者には、アイデアを出す力だけではなく、マンガ家の中にある“描きたいもの”を引き出すスキルが求められます。

◼️空気づくりで大切なのは、“まず聞くこと”

打ち合わせで特に意識しているのが「聞く姿勢」です。

マンガ家は、一人で作業をする時間が非常に長い仕事です。そのため、編集者との会話そのものが、気持ちの整理やストレス解消につながることも少なくありません。

だからこそ「何を提案するか」よりも「まずはしっかり話を聞く」という姿勢を大切にしています。

会話の中で、マンガ家が何に悩んでいるのか、本当は何を描きたいのか、といった「今どんなことを考えているのか」を丁寧に聞いていくことで、自然と信頼関係も深まっていきます。

その積み重ねが、作品づくりの土台になっていきます。

◼️「この人はパートナーだ」と思ってもらえる関係づくりを意識

マンガ編集者は、マンガ家と1対1で向き合いながら作品を作っていく仕事です。

だからこそ大切なのは「この人になら本音を話せる」と思ってもらえる関係性を築くこと。そのために、編集者自身もなるべく自然体で話すことを意識しています。

“担当編集者”という立場を超えて「一緒に作品を作るパートナー」になれるかどうかが重要なのです。

◼️「描きたいもの」と「市場」がぶつかることもある

「マンガ家が描きたいもの」と「市場で求められているもの」にズレが生まれることもあります。

たとえば、マンガ家が強く描きたいと思っている作品でも、今の読者ニーズとは少し方向性が異なっていたり、電子コミックとの相性があまり良くないと感じるケースもあります。

そんな時、マンガ編集者はすぐに否定するのではなく、まずは「なぜその作品を描きたいのか」「どこに魅力を感じているのか」を丁寧に聞いていきます。

そのうえで、市場との相性やヒットしづらい理由などを率直に共有しながら「どうすれば、その作品らしさを残したまま読者に届く形へ変えられるか」を一緒に考えていきます。

そうして時間をかけて話し合う中で、マンガ家が少しずつ熱量を持って語り始める瞬間があります。

「このキャラクターはこういう人で」
「本当はこういうシーンが描きたくて」
「この設定にはこういう理由があって」

そんなふうに、マンガ家自身の“描きたい気持ち”が言葉としてあふれ始めた時こそ、マンガ編集者が「この作品は面白くなりそうだ」と感じる瞬間です。

“その作品らしさ”をどう作るかがマンガ編集者の腕の見せどころ!

人気ジャンルでは、似た設定や導入になることも珍しくありません。そのため、マンガ編集者も日頃から多くの作品に触れ、必要に応じて類似作品を検索しながらチェックを行っています。

たとえ同じジャンルであっても、そのマンガ家だから描ける感情表現は何かを考え、その作品ならではの魅力はどこにあるのかを見つけ出し、読者へ届く形にしていくことが重要になります。

マンガ家が持っている“その人にしか描けない面白さ”を引き出し、作品の個性として磨いていく。

その橋渡しをすることこそ、マンガ編集者の大切な役割なのです。

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