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「もののけ姫」サン役の石田ゆり子、鈴木敏夫に全セリフ再収録を直訴「あれは悩んだ」

2025/10/20 22:34

宮﨑駿監督作品「もののけ姫(4Kデジタルリマスター)」IMAX試写会舞台挨拶が、本日10月20日に東京・TOHOシネマズ新宿で開催され、アシタカ役の松田洋治、サン役・カヤ役の石田ゆり子、スタジオジブリのプロデューサー・鈴木敏夫が登壇。「もののけ姫」にまつわる思い出話に花を咲かせた。

アシタカ役になったことを友人の連絡で知る

舞台挨拶の冒頭でMCからアシタカ役を務めることになった経緯を聞かれた松田は、事務所の人間からオーディションだと聞かされてスタジオに向かったものの、現場には自分1人しかいなかったと回想。「ああ、オーディション本番で使われるサンプル音声の収録か、と思いまして。そしたら後日友人から『予告を見たよ!ジブリの主役だったね!』と連絡を受けて、びっくりですよ。慌てて劇場に行ったら確かに予告から自分の声が聞こえてきて、俺、主役やるんだって。びっくりですよ」と、ありし日の思い出を振り返る。そして「犯人は僕の左側にいると思うんですけどね?」と左方向に顔を向けると、「そのことはすっかり忘れてててね」とおどける鈴木。「アシタカの声を誰にするかは結構ね、悩んだんですよ」と打ち明ける。さらに「決め手は松田さんが演じた『風の谷のナウシカ』のアスベルなんです。悩んだ末に僕は宮﨑駿に『アスベルの声はよかったよね』と言って、そうだねってことで決まったんです」と松田起用の経緯を明かした。一方の石田について鈴木は「石田さんにも出てもらった『平成狸合戦ぽんぽこ』の挨拶のときに、石田さんを前にして鼻の下を伸ばした宮﨑を俺は見逃さなかった」と茶化しつつ、「サン役も悩んだんですよ。だからもうこれだと思ったんです」と、直感で起用を決定したと話した。

「お前パンツ履いてないじゃん」宮崎駿独特のディレクション

実際の収録はどのように進められたのかとMCが質問すると、松田は「あまりに難しい役柄でどうすればいいのかわからなかったです。それにアニメーションのアテレコの経験がナウシカぐらいしかなかったものですから、もう考えても無駄だなと。当たって砕けろの精神でいきました」とコメント。「サンがタタラ場に乗り込んでエボシと戦い、アシタカが割って入る場面は苦戦しまして、途中で今日はもう帰れって言われました」と告白し、「宮﨑さんが何か違和感を感じて収録が止まるともう地獄です」と笑いながら話す。さらに「宮﨑さんが素晴らしいのは誰に対しても対応が同じこと。僕だろうと田中裕子さんだろうと、どんな方でも納得いくまで宮﨑さんは指導される。とことんこだわられる姿勢がすごい」と感嘆した様子だった。

この徹底ぶりには石田も覚えがあるようで、「私が一番下手だったし、大変だったと思います。私1人だけ居残りすることもよくあって」と苦笑い。役作りも苦戦したとのことで、「膨大な絵コンテや企画書、ものすごい数の紙の資料を事前にいただいたのですが、読んでも読んでもわからない。サンはセリフがそんなにないのもあって、彼女の動きや息、立ち上ってくる気配というか……人間であって人間じゃない、動物になりたいけど動物にもなれない、不思議な役でしたね」と振り返る。また「とにかく覚えてるのは瀕死のアシタカを助ける場面です」と力を込める。「アシタカを食べようとする山犬の子に『食べちゃダメ』と言うところとか。特にアシタカに『死ぬのか』と言うところですね。『お前パンツ履いてないじゃん』って風に言えと宮﨑さんに言われて。サンにとってはその程度の出来事だからと。当時の私にはそれがもう難解すぎて(笑)。毎日泣きそうな気持ちで、でもジブリの主役なんて夢みたいな仕事で……夢の中なんだけど地獄みたいな。不思議な恍惚感がありましたね」と懐古した。

サンの全セリフを再収録したいと直談判した石田ゆり子

このように石田が相当な重圧の中で収録に臨んでいたこと、そしてサンへの思い入れも強かったことは鈴木も察していたそうで、10年前に石田から再収録を直談判されたというエピソードを披露。「いきなり言われたんですよ、声をすべて吹き替えたい、あのときとは違う、もう1回サンをやりたいと真剣な目で言ってきた。あんまり真剣だったから俺は悩んだんですよ。もう1回録り直すってことは音の作業を全部やり直すんだから、いくらかかるかなって。僕はね、何も言葉を返せませんでした。黙るしかなかった。だからあのときの石田さんの言葉は忘れないんです」と語った。これには石田も反応。「そのぐらい反省点が多かったので」と返し、「でも『もののけ姫』の影響は本当に大きくて」と続ける。「海外に行くとどんな作品に出てますかと必ず聞かれるんですけど、『もののけ姫』でサンの声をやっておりますと話すと必ず、ものすごく尊敬されるんです」と笑顔になった。

鈴木敏夫にとっての「もののけ姫」とは

舞台挨拶の最後には、MCから鈴木へ「もののけ姫」とはどういう作品だったのかと質問が飛ぶ。そう問われて鈴木は、「お客さんがいっぱい観てくれたのはうれしかったですね。もう素直にうれしかった。それが一番ですよね」とコメント。「やっぱり何のために作るかといったら、お客さんに観てもらうためでしょう。その結果、記録に残る興行収入になったのは名誉ですよね。自分たちのために作るんじゃない、お客さんのために作ろうと、それを改めて気づかせてくれた作品ですね」と語った。

「もののけ姫」は1997年7月12日に公開され、観客動員1420万人、興行収入193億円を記録。2020年の再公開により観客動員は1500万人、興行収入201.8億円へと記録を更新した。そして今秋スタジオジブリが監修した4Kデジタルリマスターの期間限定上映が決定。10月24日に全国のIMAX対応劇場にて上映がスタートする。

(コミックナタリー)
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