アニメ映画「ホウセンカ」の舞台挨拶が本日10月22日に東京・新宿バルト9で開催され、“現在の健介”役の花江夏樹、若松役の斉藤壮馬、木下麦監督が登壇しトークを繰り広げた。なおイベントは映画の上映後に行われ、本記事でも物語の展開に触れる部分があるためご注意を。
“インテリヤクザ”な若松、早々の退場に「早めに殺しちゃってすみません」
観客の大きな拍手に迎えられ3人は登壇。冒頭の一言挨拶で、自身が演じる若松を“インテリヤクザ”として紹介された斉藤は「前半でたくさん名前が出てきたにも関わらずいったいいつ登場するかと思ったら、ものの数十秒で死んでしまった若松役の斉藤壮馬です」と勢いよく自己紹介し会場の笑いを誘う。それを受けた木下監督が「若松を早めに殺しちゃってすみません」と謝る場面も見られた。
公開後、鑑賞した人のさまざまな声が届けられている今の気持ちを問われると、木下監督は「感動したとか泣いたとか言ってくれて、丁寧に作ったのが伝わってすごくうれしい気持ちです」と喜ぶ。前作のアニメ「オッドタクシー」に引き続き、物語の中心となるような華やかなキャラクターではない人物にフォーカスを当てている点について聞かれると、「三枚目の人、日陰で生きているような人にフォーカスを当てていますね。ドラマは誰にでもあるし、それを抽出するのが大事なことだと思います」と説明した。
30代半ばの今、「ホウセンカ」と出会えたことが1つの“救い”
完成した映画を観て、「オッドタクシー」にも出演していた花江は「(「オッドタクシー」に引き続き)構成が本当に素晴らしくて。伏線というか、序盤にちょっとずつ出していったものが最後に回収される流れが、この90分にこんなにきれいに収まるんだという感動がありました」と語る。同じく「オッドタクシー」に出演した斉藤は、30代半ばの今、「ホウセンカ」と出会えたことが1つの“救い”になったと話し、「今よりも内省的で、世界は自分のことをわかってくれない、誰も自分のことを見ていないかもしれないと思っていたときに観たとしても、ものすごく救われていただろうなと。いろんな出会いがあって、縁がつながって、こんなに素晴らしい作品に役者として関わらせてもらえているんだよと感謝したいです」とストレートな感情を口にした。
映画やドラマなどで活躍する俳優をメインキャストとして多数起用した「ホウセンカ」。その中でもプロの声優を起用したポイントについて、木下監督は「魂を吹き込んでほしい人にお声がけしているようにしている」と答え、「(花江と斉藤の)技術と役者としての熱量は知っていたので今回オファーをしました」と経緯を語った。花江は“現在の那奈”役の宮崎美子と一緒に収録したと言い、「生っぽいお芝居をされるので、そこにどれくらい寄せて雰囲気を作っていこうかなと悩みました。けど、一緒に掛け合いができたのでやりやすかったですし、宮崎さんはめっちゃいい方で、すごく安心感がありました」と振り返る。斉藤は“インテリヤクザ”の若松の演技には、登場シーンは少ないながらかなり時間をかけたと述懐。「音響監督の清水(洋史)さんと麦監督とディスカッションを重ね、試行錯誤した結果、いろんなテイクを組み合わせたものが完成版になって。ディレクションをわかっているつもりだったけど、その完成版を観て、まだまだ平面的にしか人物を掘り下げられていないと悔しいという気持ちになりました。楽しかった、本気だからこその気持ちです」と振り返った。
次回作は「凶悪犯と奇人」?
花江と斉藤に演じてもらいたいキャラクターを質問された木下監督は、斉藤には奇人の役、花江には凶悪犯の役をやってもらいたいと回答。斉藤は「オンリーワンの武器になりえますから、狙っていきたいと思います」と意気込みを見せ、花江は「興味ありますね。普段優しいイメージの人が演じるほうが怖い場合とかあるじゃないですか。なので、今のこの優しいイメージは、作り上げている状態です」とにこやかに伝え、客席を笑いに包んだ。
その後互いの演技の印象や、物語のキーワードでもある“大逆転”にならったエピソードトークなどを経て、イベントはあっという間に終演に。斉藤は「ホウセンカは記憶が引き継がれる、というエピソードが印象的でした。この『ホウセンカ』という物語が皆さんの中にも残って、受け継がれていってほしいなと思えるぐらい大好きな作品でございます。ぜひ繰り返し楽しんでください」、花江は「何年後かに観たら、観方、感じ方が変わるかもしれない。皆さんの心にずっとホウセンカが生きているといいなと思います」と締めくくる。最後は木下監督が「次回作は牢屋から脱獄する凶悪犯と、いっぱいしゃべる奇人でいこうかと思います」とジョークを飛ばし、イベントは閉幕した。
「ホウセンカ」
公開中
スタッフ
監督・キャラクターデザイン:木下麦
原作・脚本:此元和津也
企画・制作:CLAP
音楽:cero(髙城晶平、荒内佑、橋本翼)
演出:木下麦、原田奈奈
コンセプトアート:ミチノク峠
レイアウト作画監督:寺英二
作画監督:細越裕治、三好和也、島村秀一
色彩設計:のぼりはるこ
美術監督:佐藤歩
撮影監督:星名工、本䑓貴宏
編集:後田良樹
音響演出:笠松広司
録音演出:清水洋史
制作プロデューサー:伊藤絹恵、松尾亮一郎
宣伝:ミラクルヴォイス
配給:ポニーキャニオン
製作:ホウセンカ製作委員会
キャスト
小林薫、戸塚純貴、満島ひかり、宮崎美子
安元洋貴、斉藤壮馬、村田秀亮(とろサーモン)、中山功太
ピエール瀧
(c)此元和津也/ホウセンカ製作委員会
(コミックナタリー)