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「9月の新連載」呪術廻戦スピンオフ始動、ハガキ職人ラブコメ、ほのぼの嫁姑コメディ

2025/10/31 15:00

雑誌やWeb、アプリなどでスタートした新連載を、毎月振り返る「今月の新連載」。版元ごとに担当者が決まっているコミックナタリー編集部では、ほぼ毎日のように始まる膨大な数の新連載を、毎日読んで記事を書き続けてきた。そんな部員たちが、その月に面白かった作品や気になった作品、そのほか最新のマンガ業界のトピックなどを振り返る企画だ。第4回は2025年9月にスタートした新連載を語る。

文 / コミックナタリー編集部

「呪術廻戦」の雰囲気をちゃんと感じられるスピンオフ「呪術廻戦≡」

くろねこ 9月の新連載というと、まずは「呪術廻戦≡」ですかね。最初は「≡-モジュロ-」というタイトルで連載の告知が打たれ、芥見下々さんが原作の新作がスタートするということで注目を集めていましたが、蓋を開けてみたら「呪術廻戦」のスピンオフだったと。

ぞう 「呪術廻戦」のスピンオフがSFなんだという驚きがありました。本編では海外の話にも触れられていたので、海外の話になるのかと予想していたんですが、そこを飛び越えて宇宙人がやって来ますから。

いぬ  僕は芥見さんの作品のファンなので、独特のセリフ回しとかちょっと棘のある独特のセリフ回しとか、「呪術廻戦」の雰囲気をちゃんと感じられて、面白く読んでます。

りす 芥見さんは原作担当だけどマンガ家ですし、ネームも描いているのかな? 会話のテンポとかが芥見さんっぽいので、ちゃんと読み味が「呪術廻戦」になってるなと思います。

うさぎ 「呪術廻戦」をまったく読んでない人が読んでどう感じるか気になるんですけど、そもそもスピンオフから読む人はあまりいないですかね。

りす そういえば「モジュロ」ってどういう意味なんですか?

いぬ  「≡(モジュロ)」は数学的に言うと合同記号ですよね。恒等式とか図形の合同で使われるような。でも漢字の「三」のようにも見えるから、「呪術廻戦0」「呪術廻戦」に続いて3つ目の「呪術廻戦」みたいな意味合いももしかしたらあるのかな?

りす なるほど。言われてみれば3つ目のキャラクターもいるし。いろんな3にかかってるのかな。

ちゃんと面白い投稿ネタを考えてる、ハガキ職人ラブコメ「さむわんへるつ」

りす 同じくジャンプの新連載で「さむわんへるつ」はどうでしたか? ラジオリスナー仲間で、ハガキ職人の高校生男女を描くラブコメです。

うさぎ 好きなマンガでした。ラブコメとして安心して見ていられますし、会話劇も面白いし、ちょっとした小ネタがよくできている。ちゃんとクスッとなれる、いい塩梅のラブコメだなと思いました。

りす 作者のヤマノエイさんはこれが最初の連載みたいですけど、会話を作るのがうますぎますよね。

ねずみ 女の子が男の子を手のひらの上で転がすみたいな話はいろいろありますけど、そこにラジオのハガキ職人という設定を取り入れた点が新鮮でした。

うさぎ 調べると、以前同じテーマの読み切りを発表されているようでした。これが連載につながったんですね。

くろねこ ヤンマガの「妹は知っている」もハガキ職人の話ですけど、作中のネタが面白いと、作品としてリアリティが出てくるから説得力がありますよね。

りす ちゃんと面白い投稿ネタを考えてるのがすごいです。よく思いつくなと思って。「さむわんへるつ」はネタだけじゃなくて、女の子が日常会話の中でめちゃめちゃボケますし。投稿ネタは渾身の一通しか送っていないという主人公に、「中には毎週100通位送る人もいる」って女の子がダメ出しするシーンが作中であるんですけど。実際、作者もマンガのために100本くらいネタを考えてそうな気がします。

うさぎ 「ダウナー系お姉さんに毎日カスの嘘を流し込まれる音声」という、マンガにもなっているASMR作品は、お姉さんが少年に嘘を教え続ける話なんですけど、ネタを考えるのが大変だという作者さんのインタビューを読んだことがあります。800個以上ネタを考えて、3割くらいしか採用しなかったとか……。

ねずみ 読んでるうちに、男の子が“天才に見える隠れ努力家”って設定だったのをつい忘れそうになってました。努力でラジオ職人の才能をバリバリ開花させていくところも早く見たいです。

くろねこ でもすぐ上達しちゃったら今の関係性が変わっちゃうだろうし、難しいところですね。

りす さすがにちょっとずつ上達していくんじゃないですか。ずっと読まれないままってことはないだろうから。ジャンプで生き残るのは大変だと思いますけど、面白いので続いてほしいですね。

昔のマンガ業界を舞台にした「来見沢善彦の愚行」

ぞう 少年ジャンプ+の「来見沢善彦の愚行」も面白かったです。ベテランのマンガ家が新人の面白い作品を自分の名義で発表する話なんですけど、ベテランの来見沢は根が善人だから悪人になりきれないし、新人の畑はちょっと得体がしれない怖さもあって。周りのキャラクターも個性的で、話にうまく絡んでくるから、1話の段階ではっきりした相関図が作れるぐらいわかりやすい。しかも騙してたことがバレたらどうなるのかという大ネタも控えてる。舞台とかドラマとか、実写映えしそうな作品だなと思ってます。

とり 1話に4000件くらいコメントがついていて、連載当初から話題でしたよね。私も友人からこれ面白いから読んでみてって言われました。

りす 作中に出てくるマンガが実在の作品をモジッたようなものが多いので、そういうのは元ネタを考えるのも面白いですよね。「今時SFは流行らない」みたいな話も、実際に昔言われてたと聞くし。昔のマンガ業界が舞台になっているのもポイントだと思ってます。畑の出自とかも、当時だからリアリティがあるというか。

ぞう 舞台を昭和時代にしたのはなんでだろうと思ってたんですけど、逆にこの時代だからこそ描ける話かもですね。

くろねこ 先ほどの作中に出てくるネタの話に通じますが、作中で描かれているマンガがどんな作品なのかすごく気になりまして。マンガを題材にしたマンガで有名どころだと「バクマン。」などがありますけど、作中に描かれているマンガも出てきてましたよね? だからこの作品でも、作中のマンガが読めたらいいなと思いました。

りす この物語はどっちに転がっていくんですかね。当然、来見沢の嘘がバレたあとの展開は考えてると思うんですが、バレたとき来見沢がひどい目にあうのか、その事情を知ったうえで来見沢と畑がコンビを組んだりするのか。先が楽しみですね。

嫁も姑のやり取りがかわいい「ヨメトメ☆にっき」

ぞう くろねこさんが挙げていた「ヨメトメ☆にっき」は、僕も連載が始まったときから読んでたんですけど、面白いですよね。

くろねこ 面白いし、嫁も姑のやり取りがかわいい。こんなにほのぼのした嫁姑マンガあるんだなって(笑)。

とり テンポ感を出すのがすごくうまいと思いました。サクサク読める。

くろねこ 落とすのも早いから、それが気持ちいい。変に引っ張らないのが今風だなって思いました。

ねずみ 家電のロボット掃除機に興味を持ってそうなシーンで、「あら、いいわね」って肯定的な反応がくるかと思ったらそうじゃなくて。単純に怖そうだけど優しい義母、というわけでもなく、まだ素直になれないところも微笑ましいなと思いました。

うさぎ 第1話が家電だったから“家電もの”なのかと思ったんですが、第2話は冷凍食品がテーマみたいなんですよね。家事を時短できる便利系のグッズを扱っていくのかな。家電に限定しないほうが広がりもありそう。

ぞう Uberみたいな配達サービスも出てきそうですよね。

くろねこ AIとかセルフレジとか。

うさぎ 最終的にこの姑さんが、なんでも使いこなすスーパーおばあちゃんみたいになったら楽しい(笑)。

りす 年をとってくると、便利そうだけど覚えるのが面倒ってことが出てくるじゃないですか。知り合いが、車で駐車するときにカーナビが後ろの映像を出してくれるんだけど、それを見ないで窓から後ろを見て停めるって言ってて。そういうことあるよなって思う。僕はいまだにAIを使いこなせていないけど、世間の編集者はもうAIをバリバリ使いこなしてるし。

ぞう 誰にでも1つぐらいありますよね、便利だけど今までのやり方を変えないこだわりみたいなものが。姑も何か1つぐらい絶対になびかないものがあったら面白そう。

くろねこ 今は月1更新なので、隔週ぐらいで掲載してほしいです。もっと読みたいので(笑)。

お仕事マンガってやっぱり面白い、建築業界を描いた「MYS」

とり 私はぞうさんが挙げていた、建築業界を描いた「MYS(ミース)」が面白かったです。教えてもらわなかったら自分から読まないタイプのマンガだったんですけど、お仕事マンガの名作になっていきそうな期待感がありますね。知らない業界の話なので勉強になるし。

ぞう 僕も建築のことは全然知らないんですが、知らない業界のいろんな事情を知れるのがいいですよね。小難しい話もあるけどそれがスッと入ってくるのは、作者さんが噛み砕いて表現するのがうまいからだと思います。主人公はもちろん、ライバルの同僚や上司も魅力的で、読みやすかった。

りす お仕事マンガって面白いですよね。社会科見学感があるし。それに建築っていうテーマがいい。建築業界のことはあまり知らないけど、普段から建物は目にしてるし、知ってるデザイナーもいるじゃないですか。ブロックで組み替えられるホテルの有名な失敗談は僕も知ってるくらい有名だけど、そういう実際のエピソードを詳しく教えてくれるのもちょっとうれしい。

ねずみ そういえば、池辺葵さんの担当編集者が「『繕い裁つ人』や『サウダーデ』で衣食は描いてこられたから、次は住でどうですか?と提案して『プリンセスメゾン』が始まった」とおっしゃってて。確かにそう考えると衣食と比べると、住のマンガはそれほど多くないのかもと思いました。食はもちろん、ファッションやメイクなど衣を描いた作品は多いですけど。

りす 建築と言うと専門知識が必要な感じがするけど、住と言われると「ひらやすみ」も住のマンガですよね。不動産ものとか部屋の間取りを考えるようなマンガもあるから、「住のマンガ」と考えるといろいろありそう。

くろねこ 建築と言っても幅が広いですしね。商業施設とかコンサート会場とかもあるし。オリンピックで新国立競技場を作ったはいいけどあまり使い道がないとか、コンサート会場とかもいろいろ機能があるわりに観客のこと考えてないとか、そういう話も読んでみたいです。

りす ライブエアプの設計ね。

ぞう でかい柱が観客席の真ん中にあるところありますよね。

くろねこ 絶対に普段ライブ行かない人が作ってるんだろうなって思っちゃう。

りす あとタイムリーな話題だと万博が終わって、大屋根リングとかパビリオンをその後どうするのかも注目されてますよね。

ぞう サッカーのスタジアムも、陸上競技でも使えるようにするのか、サッカー専門にするのか、大規模なライブを開催できるようにするのかといった議論があるんですよね。飲食店などを入れて複合施設にしたり。最近は客室から試合が観戦できるスタジアムシティホテル長崎が話題になりましたし。社会と建築のつながりも、どんどん入れてほしいです。

不死者専用の不思議な店、訳あり男女のロードムービー

ぞう 窓口基さんの「一命様お断り」は、食べたら死ぬ絶品料理を不死人だから食べられるっていう設定がユニークで面白かったです。一見ポップな感じですけど、大切な人と死に別れて置いていかれる物悲しさと切なさみたいなところが刺さります。

りす 僕は不死のメイドが死んだ主の世話をしながら温室の世話をし続けるみたいな設定のマンガが好きで。この作品はゴーレムですけど、もう終わってしまった場所で静かに閉じた生活が営まれているような箱庭感好きでした。

うさぎ この作品、新連載なのに読んだことあるなと思ったら、第1話は先に読み切りとして発表されていたものでした。月刊コミックビーム2024年11月号(KADOKAWA)ですね。

りす 連載の最初のエピソードは0話って表記されていてますね。0話と1話でけっこう雰囲気が違うと思ったら、そういうことだったんですね。

ぞう あと同じカドコミの「ナイト・リセット・キロポスト」も面白かったです。半グレっぽい男と、夫を殺した殺人事件の容疑者らしき女が車で旅するロードムービー的な作品で、1話では車という閉鎖空間に2人が居合わせる緊張感が描かれていてよかったです。3話から男の追手が登場するんですが、遠慮なく暴力をふるうタイプの人間で、このヤバい3人をどう料理するのか興味があります。

とり 私もこういう作品めっちゃ好きです。無料公開されてるところまで読んだんですけど、1話ごとに新たな事実がわかってくのがうまいなと思いました。

「死神坊ちゃん」イノウエの新作は百合、「ミルキー☆サブウェイ」コミカライズも話題に

くろねこ ほかに気になった作品や、話しておきたい作品ある人いますか?

ぞう 「死神坊ちゃんと黒メイド」のイノウエさんの新作「ギャルの百合」が素晴らしかったです。イノウエさんの作品は会話のテンポがいいし、キャラクターは子供も大人も、おじいさんもおばあさんも、人間も人外もかわいらしい。今回はギャルという流行りのモチーフに、イノウエさん流のかわいさが乗って破壊力がすごいです(笑)。今までも幼なじみの男女、老人執事と少女、 魔女と少年とかいろんな組み合わせの恋愛を描いてきた方なので、百合をどう描くのか気になりますね。

うさぎ 僕は藤緒あいさんの「夫婦が両思いになる方法」が面白かったです。すれ違いが続いて、すっかり関係が冷めてしまった夫婦の話なのですが、記憶喪失という要素をうまく使って、ありそうでなかった展開にしていて。思い出を掘り起こしていく中で、許せることも許せないことも出てくるだろうけれど、どうなっていくのか気になる。

りす 夫婦がすれ違う感じとか、妻が夫のことで抱えている許せる・許せないの微妙なラインの話にすごくリアリティがあるなと思いました。

くろねこ 記憶喪失から関係をリセットする話は、最近ちょっと見るようになった気がします。

うさぎ アニメ化された「デブとラブと過ちと!」も記憶喪失をきっかけに、ポジティブなほうに話が傾いていきますもんね。

ぞう 一種の異世界転生みたいな手法なのかもしれないですね。

うさぎ 確かに、それはあるかも。

くろねこ あと話題作だと、「銀河特急 ミルキー☆サブウェイ」のコミカライズですかね。アニメの最終回というタイミングもあったと思いますが、記事もかなり読まれました。これは本編をそのままマンガ化するんですかね。

りす 基本的に同じだけど、マンガ用に構成し直してる部分もありました。TVアニメの前日譚に当たる、監督が自主制作で作ってた短編のエピソードも入っていて。新人の作家さんが抜擢されているんですが、アニメの雰囲気をよくマンガに落とし込んでいて、アニメファンからも高評価だと思います。

座談会に参加した編集部員

  • いぬ :もうすぐ年末のマンガ賞の季節ですね。今年はどんな作品が受賞するのか。
  • うさぎ:「グルグル」と「ぼのぼの」で育ち、「明稜帝」のセージと「封神演義」の太公望に憧れました。
  • くろねこ:無料公開に釣られて「ライアーゲーム」を読み返しているんですが、全部読んでるはずなのに面白すぎる。
  • ぞう:今さらながら紀伊カンナさんの作品にハマってます。めちゃくちゃ面白いです。
  • とり:此元和津也さんが原作・脚本を務めるドラマ「シナントロープ」、毎週楽しみに観ています。
  • ねずみ:「ストロボ・エッジ」10年ぶりの新作読み切り、安堂くんが主人公なの最高でした。
  • りす:好きなマッドサイエンティストは「天地無用!」の鷲羽ちゃん。
(コミックナタリー)

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