劇場アニメ「アイカツ!×プリパラ THE MOVIE -出会いのキセキ!-」のプロデューサートークショーが、去る11月1日に東京・新宿ピカデリーで開催された。上映後のトークショーにはバンダイナムコピクチャーズの木村大氏、清水良太氏、タツノコプロの依田健氏、バンダイの原田真史氏、タカラトミーアーツの大庭晋一郎氏が登壇。司会はバンダイナムコピクチャーズの岡安涼氏が務め、作品の制作経緯や裏話を約50分にわたり語った。
誰も冷静な判断をしなかった?“キセキのコラボ”実現への道のり
「アイカツ!」の“あかりGeneration”と「プリパラ」がともに10周年を迎えたことを記念して制作された「アイカツ!×プリパラ THE MOVIE -出会いのキセキ!-」。同時代にアーケードゲームとアニメを展開し、ライバルとも言える関係の両者による“キセキのコラボ”の実現までの道のりを、プロデューサー陣のトークショーで紐解いていった。木村氏と清水氏は“あかりGeneration”からアニメ「アイカツ!シリーズ」に携わり、データカードダス「アイカツ!」の立ち上げに関わったのが原田氏。一方依田氏と大庭氏は「プリパラ」のほか、「プリティーリズム」から「ワッチャプリマジ!」までの「プリティーシリーズ」全体に携わっている。原田氏は「当時、男の子向けの筐体は非常に調子が良かったんですが、女子向けはなかなか難しかった。そんなときに『プリティーリズム』が出てきてすぐに見に行きました」と当時を振り返り、そんな原田氏との関係性を大庭氏は「ニコニコしながら足を踏み合うっていうのを、ずっと続けています(笑)」と冗談交じりに紹介した。
そんな両者のコラボが実現した今作の制作経緯について、木村氏は「(星宮)いちご世代の10周年で『アイカツ! 10th STORY ~未来へのSTARWAY~』をやった後、あかりの10周年では何をやろうかと話をしていました。2022年に『アイカツ!シリーズ』と『プリティーシリーズ』の主人公がコラボした『ドリコラFes.』というのがあったんですが、それの延長線で、ゆくゆくは『アイカツ!シリーズ』と『プリティシリーズ』で、ライブイベントをやりたいんですよね、という話が出まして。じゃあ『プリパラ』さんが確か10周年だから、一緒にやるといいいんじゃない?と、岡安と清水と盛り上がった」ときっかけを説明。その後タツノコプロに提案を持って行ったという。依田氏は「そんな楽しい企画書を見せていただいて、これはもう乗っかるしかないよなって。ちょうどそのとき『プリマジ』が終わって3DCGチームも次のお仕事ができるタイミングだったので、ぜひやってみたいですと。ただ、そうなるとたぶん一番ネックになるのはお隣の2人だと思いました」と大庭氏と原田氏に水を向ける。
当時すぐにOKしたという大庭氏は「ここで『無理ですよ』っていうのはカッコ悪いじゃないですか。だから半分はカッコつけで『ぜひやりたいです、上に話します』と言ったものの、冷静な判断はちゃんと上の人がやってくれるんじゃないかと思っていました(笑)。でも、たぶん誰も冷静な判断をしなかったんでしょうね」と笑う。原田氏も「一応社内はざわっとしてたんですが(笑)、『ドリコラFes.』がやっぱり下地になってたところもあって、割と早めに(OKの)お答えをさせていただきました」と振り返った。予想外にスムーズに話が進んだことについて、木村氏と清水氏は「弾かれてからが勝負かなって思ってた」「すんなりと決まりすぎて怖い」という感想だったそう。「本当に皆さんありがとうございました」と改めて関係者に謝辞を述べた。
タツノコプロCG班・乙部善弘の英断
続いては、作中のコラボステージのキャラクターと楽曲の組み合わせに関する話題へ。まずは決めるにあたり、両作それぞれから「ライブで盛り上がる曲、みんなが聴きたい曲」を約10曲ずつ挙げていったという。その後、キャラクターの組み合わせ、歌うときの衣装などを考える中でさらに二転三転を繰り返し、楽曲決めだけで3、4カ月を費やしたそう。結果「アイカツ!」「プリパラ」各6曲が使用されているが、ほかの候補曲として「アイカツ!」より「Pretty Pretty」「ハローハロー」「フレンド」「薄紅デイトリッパー」、「プリパラ」よりドレッシングパフェ関連楽曲や「パニックラビリンス」などの名前が挙がると、そのたびに客席から歓声が上がった。また依田氏は「『Make it!』をやっていいんだろうか、というのはちょっと悩みましたね。あまりにも『プリパラ』を代表しすぎているのと、毎回毎回やるので(笑)。結果的にはシナリオの中で外せない曲になったなと思います」と明かした。
ひびきのソロ曲「純・アモーレ・愛」ではひびきと珠璃がコラボ。既存曲の中ではこの曲のみモーションが新規制作されているが、その経緯について依田氏は「ひびきのソロ曲なので、反転したら2人作れるかなって最初は思ったんですが、(ひびきは実際には女性であるものの)どうしても男と女の振りの違いに無理があって。CG班の乙部(善弘)が『モーション新規で撮っちゃったほうが早いんじゃない?』と。正直それは当初の予定にもないし、予算も組んでなかったけど、その場で『うん』って言ってしまって(笑)」と振り返る。清水氏も「『大丈夫なんですか?』って。乙部さんの男気を感じました」と当時の驚きを語った。
「アイカツ!」珠璃は「プリパラ」でもやっていける
続くドレスの話題では、お互いの社内の「アイカツ!」「プリパラ」ファンが力になったというエピソードが。清水氏は「スタジオにどっちの作品も好きなメンバーがいるので、どういうドレスを着せたらいいか、ひと通りリサーチもしました。やっぱり現場の事情もあるのでけっこう悩みました」と回想。依田氏も「CG班にも両作をめちゃくちゃ好きな人が何人もいて。打ち合わせをやるたびに、厚いレポートをもらうんです(笑)。『アイカツ!』のストーリーのあらすじ、各キャラクターの紹介、“こういう歴史があるのでこういうことはやっちゃダメです”とか。曲がある程度決まったところで、ドレスについても“これとこれがいいと思います”という10ページぐらいの資料を作ってくれて、それをベースに話していきました」と明かし、木村氏も「すごくわかりやすい資料でしたね」と感謝の念を伝えていた。
制作で苦労した話を聞かれると、まずは清水氏が「総作画監督の秋津(達哉)さんが、『アイカツ!』側のスタジオの人で両作に携わったことのある人なんですが、最初の頃は『あかりが全然似ない、らぁらのほうが似る』ってすごく苦労をしていました」と明かす。CGを手がけたタツノコプロ側では、もともとの「アイカツ!」のデータを受け取った後、整理していくのが大変だったという。依田氏は「同じステージに両作品のキャラが並んだときに違和感がなく、作画とも違和感がないようにモデルを調整する作業を最初に全キャラクター分やった。そこが多分一番大変だったんじゃないかなと思います」と述べ、清水氏も「本当にさすがだなと。モデルの制作の過程を見ていて、作画と本当にマッチする形で調整していっていただいているのが目に見えてわかったので、素晴らしい技術だと思っていました」と称賛した。
そして最後に質疑応答のコーナーへ……と思いきや、なんと客席2列目に、チケットを購入して観に来ていたという大川貴大監督の姿が。質問を求められた大川監督は遠慮しつつも「好きなキャラクターを教えてください」と素直な質問をぶつける。木村氏は「自分のやっている作品はすべてのキャラクターに等しく愛を注ぐのが僕のポリシーなので、今作に出ている『プリパラ』さんの中で挙げるなら、『純・アモーレ・愛』の印象がすごく強くて、ひびきは面白いキャラだと思っています」と回答。清水氏は「『アイカツ』は自分が最初に担当した話数だったのでここね、『プリパラ』はみかんです。単純に肉まん食べてる姿がかわいい(笑)」と述べ、依田氏が「『アイカツ!』では珠璃です。あの子はプリパラに来てもやっていける!」とコメントすると客席からも笑いが起こった。すると原田氏も「個性の強い『プリパラ』さんの中で、珠璃はよくがんばったと思います」と続け、同じくひびきの印象が強いと答える。最後に大庭氏は「アイカツ!」からまどかを挙げ、「本当に細かいことなんですが、ちゃんと事態を俯瞰して見て、適切なアドバイスを自然に行っている。そういうシーンに僕はすごく感動するんです」と意外な着眼点を明かした。
キセキは起きる、がんばれば起こせる
最後にプロデューサー陣からひと言ずつメッセージが送られる。木村氏は「今日はこんなおじさんばっかりの回に来ていただいてありがとうございます(笑)。何回も観ていただいている方も多い中で、少しでも新しいお話ができたならよかったかなと思います。引き続きよろしくお願いいたします」と語りかけ、こうしたトークイベントへの出演が初めてだったという清水氏は「しゃべり足りないことばかりで、あと1回2回ぐらいやりたい」と意欲を見せつつ「作品を本当に好きな方が多い中で話す場をいただいて、本当にありがたいなと思いますし、こういう作品に関われたことがすごくうれしいです」とファンへ感謝を述べた。
依田氏は「さっき、すごくすんなりいきましたみたいな話をしましたが、きっと実はそんなことはなくて、各所でそれなりにいろんなことが起こったのを、プロデューサーもですが、関係各社の方々が一生懸命うまく立ち回ってくださって、完成にこぎつけたんだと思います」と切り出す。そして「やっぱりキセキは起きるというか、がんばれば起こせる。僕も皆さんも、仕事や勉強や人間関係で困ることが、きっとあると思うんです。でも、きっと大丈夫。絶対絶対絶対、大丈夫。なんとかなります。だって、こんなに楽しくてキセキみたいな映画が観れたじゃないですか。そんなふうに、困ったときにこの映画のことを思い出してもらえたらうれしいです」と、客席に熱く語りかけた。
原田氏は「10周年のコラボなんですが、皆さんもこの10年いろんなことがあったんだろうなと思います。我々にもいろんなことがありました。ただ、ここからやっぱり大事なのは、次の10年に向かっていくことだと思います。また皆さんにお会いできることを楽しみにがんばっていければと思います」と挨拶。最後に大庭氏は「作り手側も、物語の中のアイドルたちも、みんながキセキを起こそうと1つの方向に向かってできた映画だと思っています。最後にキセキを起こしてくれるのは皆さんです。皆さんでキセキを起こしていきましょう」とトークショーを締めくくった。
「アイカツ!×プリパラ THE MOVIE -出会いのキセキ!-」
公開中
スタッフ
アイカツ!原作:BN Pictures
プリパラ原作:タカラトミーアーツ/シンソフィア
アイカツ!原案:バンダイ
監督:大川貴大
シナリオ:土屋理敬
キャラクターデザイン:やぐちひろこ、原将治
スーパーバイザー:木村隆一、森脇真琴
総作画監督:秋津達哉
CGディレクター:乙部善弘
色彩設計:大塚眞純
美術監督:小松奈津子、田尻健一
撮影監督:大神洋一
編集:新居和弘
音響監督:菊田浩巳
音楽:滝澤俊輔(TRYTONELABO)
3DCG:タツノコプロ
企画・制作:BN Pictures
配給:バンダイナムコピクチャーズ/エイベックス・ピクチャーズ
キャスト
大空あかり:下地紫野
氷上スミレ:和久井優
新条ひなき:石川由依
紅林珠璃:齋藤綾
黒沢凛:高田憂希
天羽まどか:川上千尋
大地のの:小岩井ことり
白樺リサ:福沙奈恵
藤原みやび:関根明良
栗栖ここね:伊藤かな恵
堂島ニーナ:矢野亜沙美
真中らぁら:茜屋日海夏
南みれぃ:芹澤優
北条そふぃ:久保田未夢
東堂シオン:山北早紀
ドロシー・ウェスト:澁谷梓希
レオナ・ウェスト:若井友希
黒須あろま:牧野由依
白玉みかん:渡部優衣
ガァルル:真田アサミ
紫京院ひびき:斎賀みつき
ファルル:赤﨑千夏
緑風ふわり:佐藤あずさ
(c)Aikatsu, Pripara 10th Project
(コミックナタリー)