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遺された記憶
藍川京女史の愛読者のやなぎやこ。本書のトップを飾る氏の「遺された記憶」につきレビューします。亡母の形見の日記にあった想い人を訪ね、北陸に足を向けるヒロイン。そこでの思わぬ出会いから物語は一気に進む。供養のつもりか、母の元カレの足跡を追うヒロインの健気さ、ひたむきさに惹きつけられ、読者はページを捲りながら思わず感情移入して彼女の幸せを願う。ラストもヒロインの将来の幸せにつながることを予想させる終わり方で、すっきりとした読後感。星4つとする。
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今夜は感じすぎるの
藍川京作品愛読者のやなぎやこ、ここでは本アンソロジーに収録されている「今夜は感じすぎるの」についてレビューします。
主人公は過去に短期ながら水商売のバイト経験のある人妻。その当時客として来店していた男との再会を契機にロマンスが展開される。初めての不倫に躊躇いながらも男のリードにより徐々に禁断の領域に足を踏み入れていくストーリー運びの達者ぶりは本作でも健在で、メインの絡みの描写もなかなか工夫が凝らされていて宜しい。道ならぬ関係に揺れ動く女心の記述が丁寧であり、プレイ描写も濃密で、藍川氏の作品で頻出する「ねっとり」と表現される筆致がいかんなく発揮されている。本短編に限れば星4つとしたいところだが、アンソロジー全体の評価となると、各著者の作風も読者の嗜好も広がるためニュートラルとさせていただいた。
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火の花
藍川京作品の愛読者のやなぎやこ。Vol.1のトップを飾る氏の「火の花」につきレビューする。本作は冒頭より火の花(=彼岸花)の赤が鮮やかに描かれ、読者の視界が紅一色に染まる。と思っていると、ヒロインの父、そして弟子でヒロインと結ばれる男が生業として取り扱う竹が描かれ、一転して清冽な碧緑が作品世界を彩る。話の展開も美しく、ヒロインのやさしい性格が丹念に表現されていることも相まって良品と言えるだろう。そこへもってきて、他の作品でも見られない上述の見事な色どりの対比。一本取られた! と思わず心中うなってしまうほどの計算し尽くされた文章術に、脱帽する逸品。
さて一方、アンソロジー全体の評価であるが、各著者の作風も読者の嗜好も広がるためニュートラルとさせていただいた。
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紐
藍川京作品愛読者のやなぎやこ、ここでは本アンソロジーに収録されている「紐」についてレビューします。
本作は既婚のミドル男女が織りなすロマンスで、舞台ももはや著者の庭先といっていい京都の町。女性の、相手の男の配偶者に対する細やかな心情も描かれ、また性愛小説の核たる絡みの部分にも十分な長さが確保され、手堅い短編に仕上がっている。ただし、作中には、ソフトながらSMプレイも少なからず描かれているが、小道具として題名ともなっている紐の迫力が弱い。紐を使ったプレイがなんとなく浮いているのである。アブノーマルプレイに関心のないやなぎやこ的には不要とさえ思え、倒錯なしでねっとりと書いても十分いけるシチュエーションではなかったかと思える。それでも女性が魅力的に表現され、ファン以外の読者も読んで損はないと思う。そしてアンソロジー全体の評価であるが、各著者の作風も読者の嗜好も広がるためニュートラルとさせていただいた。
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誘惑の季節
藍川京作品の愛読者のやなぎやこ、本アンソロジー収録の「誘惑の季節」につきレビューする。なお本作は図書(単行本・文庫)のかたちでは他に出版されておらず、雑誌「特選小説 1997年6月号」に掲載されているのみという点でレア作品。ちなみに雑誌では、山本タカトの挿絵がよくマッチしていて秀逸。
脱線したが、主人公は二十代半ばの若妻。世代の近い官能小説家に似ていたため人違いされたことが発端になり、ロマンスへと発展していく。おりしも主人公は夫が仕事が多忙なことから夫婦間の営みがご無沙汰で、性の渇きに直面していたこともあって相手の男の誘いに乗ることに。藍川作品の中では斬新な筋書きで、男女の絡みに至る過程で大いに気分が盛り上げられる。性描写の部分ははわりと短く、その一方で、一戦交えた後の文章が長く続くが、その短所が短所と思えないほど総合点で高評価。
さて、アンソロジー全体の評価であるが、作者や読者層およびその好みまで多岐に亘るため、ニュートラルとする。
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梅雨の花
藍川京女史の愛読者のやなぎやこ。Vol.22のトップを飾る氏の「梅雨の花」につきレビューします。夫が借金している奥さんを、その友人である妻が連れ出して、主人公の初老男が玩ぶ、というストーリー。資金援助のカタに関係を求めた女性をゆっくりゆっくり男が自分のものにしていく過程を楽しむ嗜好が凝らされている。読者諸兄には短気を起こさずじっくりと読み進んで頂きたい。本アンソロジー全体の評価は、作者や読者層およびその好みが多岐に亘るためニュートラルとする。
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