私には少しだけ霊感があります。
そんな私が体験した、少し変わった霊のお話です。
一昨年の夏、親戚のご夫婦が離婚されました。
ご主人側の浮気が原因だそうです。
奥様は憔悴仕切っておられましたが、何とか前を向いて第二の人生を歩もうとされておりました。
私達親戚一同は、そんな奥様を励ますために食事会を開きました。
奥様はとても嬉しそうでした。
「落ち込んでいた時は首も頭も重くて何もできなかったし、自殺も考えたけど、離婚が終わった今はもう死ぬことは考えていないわ。首はまだ少し重いけど、少しずつよくなってるから。」
とのことでした。
私たち一同は胸を撫で下ろしました。
本当に自殺するのではないかと心配した時期もあったからです。
ただ、奥様の首に青白いモヤのような霊的なものがまとわりつくように見えたので、私は少し不安でした。
ふと奥様がトイレに行くため席を立った時、私は見てしまいました。
背中に女がぶら下がっていたのです。
もちろん人間の女ではなく、青い半透明の霊的な女です。
あまりにはっきり見えたので一瞬ギョッとしました。
普通、私が見える霊はモノクロでもっとぼんやりしており、考えていることや念が脳に映像や音で伝わってくるような感じです。
青というのと、念が何も浮かんでこない女は普通の死者ではない気がしました。
女をよく見てみると、奥様の首を両手で捕まるようにして、こちらに背を向けてぶら下がっていました。
前から見たら分からないように奥様の背中に隠れて、こっそり後ろから首を絞め続けていたのです。
首のモヤは、女の指でした。
その時、女がゆっくりとこちらを向きました。
憎しみや怒りに顔を歪ませながらギロリとこちらを睨んでおり、私と目が合いました。
次の瞬間、女は奥様から離れ、私に向かって襲い掛かってきました。
通常の霊は目が合うと念を送ってきます。
怒りの映像だったり、無念の声を聞かせることはあっても、何も言わずにやたらと人を襲う霊はいません。
不思議なことに女からは念が一切見えませんでした。
今まで経験したことのない相手に恐怖を感じ、必死に守護霊の祖母に助けを求めました。
祖母は祖父や曽祖父母、さらにその上の祖父母まで呼んでくれて、何とか私から不気味な女を切り離してくれました。
女は暴れており、曽祖父母達が必死に取り押さえながらどこかに連れていきました。
祖母はくるりと振り返り、「余計なことをするな!ああいう厄介な奴は見るな!」と私をきつく叱って消えました。
しばらくして奥様がトイレから戻り、
「みんなと食事して楽しかったから首も楽になったみたい」
と嬉しそうでした。
何も知らない親戚達も喜び、食事会は終わりました。
それから一年が経ち、奥様もすっかり前向きに人生を楽しまれておりました。
今度はご主人側の用事で私だけが参加することになりました。
ご主人は再婚されていました。
後妻さんはよく気のつく、若くて大人しそうな人でした。
葬儀の合間、後妻さんとお話する機会がありました。
後妻さんはいざ話をすると一方的に喋る、少し変わった方でした。
後妻さんも霊感があるそうで、こんなことを言いました。
「前妻が呪ってくるの。私と主人が幸せになるのを妬んでいるからそれを退けようとしているの。」
と憎々しげに表情を歪めました。
その顔は、以前奥様にぶら下がっていたあの女の顔でした。
私はギョッとし、適当に話を終わらせて逃げるように帰りました。
生き霊だったから死者とは異なり、青くて念が見えなかったのです。
ちゃんと離婚してくれるのか、離婚後は自分と結婚してくれるのか、自分以外の人と浮気しないか、そんな浮気ゆえの恋の不安を奥様に生き霊という形でぶつけていたのです。
自分は不義密通の関係でありながら、奥様さえいなければ幸せになれるのに、という身勝手な気持ちなのでしょう。
呪っているのは奥様ではなく自分の方であり、その呪いのせいで「呪われている」と苦しめられていることに気づかない、可哀想な人でした。
ご主人は後妻さんに暴力を奮うそうです。
奥様に後で聞いたところ、暴力を奮われたことは一度もなかったそうです。
でも後妻さんは嬉しそうに「私と◯◯さん(ご主人)はお互いを傷つけ合うことで深まる運命だと神様が言っているの?!」
と語っていました。
もし呪い返しというのがあるのなら、こういうことなのかもしれません。
死霊よりも生き霊の方がはるかに恐ろしく、厄介であることを知った体験でした。
青い半透明の…