「スポーツ省」が存在する日本で生きるアスリートの苦悩と飛翔を、圧倒的な筆致で描いた、長編。物語は、スポーツ省が元・柔道金メダリストの沢居弘人に、高校生ランナー・仲島雄平をサポートするように命令をくだすところから始まる。「金メダル倍増計画」を掲げ、莫大な予算でアスリートを管理・育成するスポーツ省は、次回のオリンピックで仲島に金メダルを獲らせるよう沢居に命じる。そんな折、米国のIT企業が一社独占でオリンピックに対抗しうる国際大会を企画しているという知らせが入り――。オリンピック、ドーピング問題、引退後の人生設計……さまざまなテーマを内包しながら物語は疾走する。そもそも、なぜ人間はスポーツをするのか。そんな根源的な問いが胸に迫ってくる、まったく新しいスポーツ小説の傑作。