藍川京のデビュー作。めくるめく耽美な性の世界を和のよそおいで表現した記念碑的な一編です。作中には後の作品にたびたび取り入れられるシーンがいくつもちりばめられ、本作が藍川ワールドの原点であることを認識させられます。
さて主人公は緋絽子という
名の女子大生。本命の男と一緒になりたいなら、人里離れた旅館風の家宅を次々と訪れる男たちと関係を持て、と条件をつけられ、それに従い男性遍歴を重ねていく、という虚構全開の筋書き。しかも交渉内容がソフトながらSMその他フェチも含まれフルコースの様相。個人的にはここまで書くなら、ヒロインはウブな若者ではなく、ある程度世故に長けた熟女の方がすっと入り込めたような気がするが・・・。
いささか脱線したが、本作は作家が商業小説としての上梓を意識せず、これまで書きたいと思っていたことを綴った、という内容の後書きがあるように、純粋に表現者としての追究心から生まれたという点が特徴。その意味でこの作品は紛れもなく純文学に分類されてよいと思う。但し好みは分かれるか。特に主人公・緋絽子のキャラに少々主体性が見られず、男たちに翻弄されるだけの薄い存在に思えて仕方がない。ために星は満点マイナス1で4つ。
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