白樺派の代表的作家の一人、有島武郎の傑作長編小説。「武蔵野」で有名な自然主義作家、国木田独歩の最初の妻である佐々城信子をモデルとしています。アメリカにいる再婚相手に会うため、太平洋航路の客船に乗った早月葉子。船上で知り合った客船事務長の倉地三吉と恋に落ち、再婚は取り止めて日本に帰国してしまいます。そして……。封建制度に反発し自我を押し通して生きようとした女性の波瀾万丈な物語。ITmedia 名作文庫では、1924年刊行の「有島武郎全集」(叢文閣)を底本とし、2010年度常用漢字改定に照らし合わせ、現代仮名遣いへ改めました。巻末付録に正宗白鳥による評論を付けています。
目次:
或る女
有島武郎の「或る女」 正宗白鳥
著者について:
1878年3月、東京小石川に大蔵官僚有島武の長男として生まれる。次男は画家の生馬、三男は小説家の里見とん。学習院を経て札幌農学校で新渡戸稲造に師事。渡米しハーバード大学等で学ぶ。武者小路、志賀直哉等の「白樺」に参加し創作活動に入る。社会主義に影響を受け、北海道にあった有島農場を開放し財産を処分する。「或る女」「カインの末裔」「生れ出づる悩み」「一房の葡萄」など有名作品は多数。1923年6月没。