このレビューはネタバレを含みます▼
漱石による未完の小説であり、書かれている部分のみに注目すると、心の中の比較的暗めな要素(例えば疑心暗鬼や確執など)が重点的に表現されているのですが、果たしてその先に作者はどのような展開を描こうとしていたのか、想像が膨らみます。主人公である津田の家族一人一人の様子が細かく表されているところから、自分としては、きっとその後の言動も引き続き追っていこうとしたのではないかと思います。不安定な人間関係に着目し人の心理をよく考えようとしている特徴は、現代を生きる我々にも深く考えさせられる内容だと思います。