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「産業形成につながる紆余曲折のある長いイノベーションのプロセスを、企業の利潤動機と市場競争の機能だけに還元して説明することは不可能であるように思える。なぜなら、不確実性の高いイノベーション活動へ資源配分を行うことの経済的根拠を、広く人々が納得するように、透明性をもってあらかじめ説明することは難しいと思われるからである。そうであるならば、収益圧力に晒される企業は、将来の収益を計算できないような新技術や新事業の開発活動を、最終的に産業が形成されるまで、どのようにして継続することができるのだろうか。つまり、『高い不確実性の下で新技術や新事業の開発が長期にわたって継続されるのはなぜなのか』。この問いが本書の出発点となる問いである。イノベーションを通じた産業形成を解明するには、この問いに答えなければならない。 この問いに基づいて本書では逆浸透膜開発の歴史を分析する。逆浸透膜とは様々な原水から真水を造るための半透膜である。その開発は、水不足という明確な社会課題の解決を目的として始まったものである。次節で説明するように、社会課題解決型技術の開発には特に高い不確実性が伴うことが多く、それを長期にわたって継続する過程において企業は、必然的に、様々な困難に直面することになる。それゆえ、社会課題解決型技術の開発に注目することによって、イノベーション活動の前に立ちはだかる数々の困難が克服される過程がより鮮明に描き出されると考えられる。」――序章より
9784492534113
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