この物語の主人公は、地道に地道にデータを集めて真実に迫ります。専門家に話を聞いて、現地に行って、調査を進めます。「詳しい人」が核心に迫るようないい感じの情報を落としてくれるわけでもなく、博識な名探偵が己の知識でパッと解決するわけでもありませ
ん。専門家に話を伺うにしても、専門家に上手く聞くための情報や知識が必要、といった具合に、己の働きかけでしか調査は前には進みません。この、調査の描写をしっかり書いてあるところが本作の素晴らしいところだと思います。現実でこんなに労力をかけて調べたいことが無くとも、例えばゲームをプレイしているときにゲーム内の資料を読むのが好きだったり、キャラクターの手記などが出てくるとワクワクするタイプの人は、この小説が楽しめると思います。何かを本気で研究する人って魅力的ですね。私は残念ながらそういうものにまだ出会えていませんが、身の周りで何か気になるものはあるかな、と探したくなりました。
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