「能持ち」……それは、魔神に見初められた数少ない人々であり、動物の姿に身を変えた魔人を従え、その能力を我がものにし、国の中で重用されていた。ある日、海に浮かぶ小国・ヨトルヤド最北の村に、怪しい「能持ち」の二人組、ギルバートとルーサーがやってきた。村に住む天涯孤独の少女・アメリアは、浮世離れした言動のギルバートを詐欺師かもしれないと最初は疑うが、彼らは正真正銘の王宮よりの使者であった。ルーサーは王の密命を受け、ギルバートと共に生きている魔神の譲り先を探していると言う。ギルバートは、五百年前に無から有を生み出す十二聖賢の長「創造の魔神」に見初められ、ヨトルヤドの英雄として名を馳せたギルバート・ファラーその人だったのだ。英雄の後継者に指名されたアメリアだったがその理由を聞いて、申し出を断ってしまう。そこから三人の奇妙な旅がはじまった。