※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。
大学のあり方が大学の内部から、学生たちによってきびしく問われたのは、いまから二〇年近く前、あの大学紛争の時代でした。
しかし今になってみると、問題提起のはげしさや議論の華々しさのわりに、問い直しや改革の実の方は、あまりあがらなかったという印象は否めません。紛争後、大学が変わったことはたしかですが、その変化は改革の構想にくらべてきさやかなものでしかなく、提起された問題の多くは未解決のままに、持ちこされてきたといっていいでしょう。
大学のあり方を聞う新しい動きが始まっているという、確かな手応えはあるのですが、それが具体的にどこで、どのような形で進んでいるのか、いまひとつはつきりしません。それはなにょりも、大学のあり方への問いが、大学の外側から、しかも大学一般ではなくひとつひとつの大学に、きわめて具体的な形でむけられ、また受けとめられているからだという感じが強くします。いずれにせよ、その新しい動きに自分なりに検討を加え、問題の輪郭をはっきりさせたい――それがこの本をまとめるにあたっての、私の基本的な動機でした。(「はしがき」より)
目次
はしがき
第1章 「貧しさ」の大学
1 アメリカの大学で/2 原点としての「貧しさ」/3 大正という時代/4 「貧しさ」への逆行/5 ゆたかさの中の「貧しさ」/6 ゆたかさへの前進を
第2章 官学と私学
1 官と公と私と/2 日本の私学政策/3 私立大学のオリジン/4 サラリーマン養成所/5 官学中心主義/6 私学の重要性
第3章 大学の国際化
1 なぜ国際化なのか/2 欧米の大学と国際交流/3 近代化と国際化/4 OECDの報告書/5 日本の現状/6 改善の方向
第4章 女子高等教育の未来
1 学歴の意味/2 学歴の性別格差/3 資格指向と教養指向/4 女子教育の混乱/5 資格の形骸化/6 教育目的の再検討
第5章 短期高等教育の展望
1 短期高等教育の起源/2 戦後の学制改革/3 短期大学と専修学校/4 短期高等教育の位置/5 短期高等教育の未来
第6章 大学院の再検討
1 大学像の転換/2 大学院の機能/3 データにみる大学院/4 文科系大学院の問題/5 就職の機会/6 再検討の必要性
第7章 混迷する大学像
1 「成人化」するスウェーデン/2 イギリスと韓国/3 問われる大学/4 大学院の問題/5 研究機能の低下/6 大学の開放/7 中等後教育システム/8 国家と企業
第8章 挑戦される大学
1 ブームの再来/2 新増設と革新と/3 専修学校の挑戦/4 国際化の衝撃/5 進むハイテク化/6 学習社会の職業教育/7 試練のなかで
あとがき