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10分で背筋が凍り付く
「まだこんなくだらん本読んでいたのか。捨てろと言っただろ」
ベッドで寝転んでいた僕から本を取り上げた父さんの顔は今でも忘れない。結局、何度謝っても本は返してもらえなかった。
「カートスの最新刊今日発売らしいぞ。帰りに買いに行こうぜ」
「今度はどんな話が載っているんだろうなぁ~」
数年前、ネットにカートスと名乗る謎の男から不思議な話を聞いたと語る体験談が現れた。以来“カートスから奇妙な物語を聞いたという人々”が次々と現れ、彼の名は瞬く間に広まった。
謎の作家“ランドリック・カートス”。
年齢不詳。経歴不明。分かっているのはその名前とくたびれた白髪、そして青く輝いているという左眼の噂だけだった。
学校帰りの本屋。カートスの最新刊を手にレジに向かう友人たちを横目に、僕はひとりその場に残った。
「どうせ買っても父さんに取り上げられるだけ……か」
僕の心を見透かすように話しかけてきた謎の男。すらりと伸びた背に、ボサボサの白い髪。その隙間からは輝く青い瞳が覗いていた。
「なら、君だけにまだ誰にも話していない話を聞かせてあげよう」
今から紹介するのは、彼が話してくれた奇怪な物語たちである。