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変容する地域社会における、新たな地域づくりの可能性
本書は、宮城県大崎市岩出山地域でのフィールド調査をもとに、人口減少や高齢化、都市部への人口流出といった深刻な課題に直面する地域社会において、持続可能な地域運営の新しいかたちを探る実践的研究である。なかでも、著者自身が伴走した「臥牛プロジェクト」に代表されるような、多様な主体がゆるやかに関わり合う「場」の形成とその意義に着目し、地域のなかにおける「公(フォーマル)」と「非公式(インフォーマル)」な「場」の相互作用が、地域にどのような創造性や持続可能性をもたらすのかを、経営学の理論的視座から考察する。既存の組織や制度の枠を超えて生まれる、新たな地域づくりの可能性を描き出す一冊。
地域づくりに携わる実践者、研究者、そして地域の将来に悩むすべての人に届けたい、現場発・実践直結型の地域運営論!
〈目次〉
はじめに
序論 地域コミュニティの構造
序 章 研究の起点
1 地域コミュニティとは何か
(1)共同体としてのコミュニティの定義
(2)地域運営を担う主体の変遷
(3)市町村合併が地域コミュニティに与えた影響
2 地域コミュニティを取り巻く課題
(1)内的要因 ―社会的環境の変化
(2) 外的要因 ―行政主導から住民主体への政策転換
3 本書のねらい
(1) 持続可能な地域コミュニティ運営に向けた3つの問い
(2)インフォーマルコミュニティへの着目
4 良いコミュニティとは―「実践コミュニティ論」からの示唆
5 本書の構成
第1章 地域運営をめぐる議論と動向
1 学術的議論の概観
(1)地域研究の系譜
(2)建築・都市計画学研究の論点 ――方法論としての「市民参加」
(3)都市・地域社会学研究の論点 ――概念としての「コミュニティ」
(4)公共政策学研究の論点 ――政策論としての「ガバナンス」
(5)経済・経営学研究の論点 ――組織論としての「マネジメント」
(6)議論の方向性と論点
2 政策の動向
(1)人口減少への対応と分権化の推進
(2)行政の広域化を背景とした新たな地域自治圏の設定
(3)ネットワーク型の地域運営体制の形成
(4)地域コミュニティの法人化 ―運営手法の転換
(5)論点と共通課題の整理
3 仮説の検討と研究枠組みの整理
第 2 章 対象地の選定・研究方法
1 研究対象地域の選定
2 研究方法
(1)アンケート調査
(2)ヒアリング調査(インタビュー調査)
第Ⅱ部 事例研究――宮城県大崎市岩出山地域を事例として
第 3 章 研究対象地域の概要
1 大崎市岩出山地域の地域特性
(1)地勢・立地
(2)歴史的・文化的背景
(3)人口動態・世帯数
(4)産業構造
(5)行政体制
(6)これまでの地域づくりの動向
2 岩出山地区住民の生活実態
(1)居住期間・家族構成・職業等
(2)生活圏域(通勤通学・買い物)
(3)日常の移動手段
(4)情報通信環境
3 小括
(1)研究対象地域の位置づけ
(2)地域運営のあり方検討に向けた前提条件
第 4 章 住民意向と地域への意識
1 はじめに
(1)本章の課題
(2)既往研究と本研究の位置づけ
(3)調査分析方法
2 住民意向と課題認識
(1)地域住民の日常的な不安要素
(2)住民の地域課題への意識
(3)地域づくりや奉仕活動の状況
(4)地域づくり活動や奉仕活動への関心度
3 考察
(1)共同体的課題の解決による満足度の向上
(2)意識づけと参加へのアプローチ
(3)若い世代等が参加できる仕組みづくり
4 小括
第 5 章 自治会の役割
1 はじめに
(1)本章の課題
(2)日本の自治組織の特徴
(3)既往研究と本研究の位置づけ
(4)調査分析方法
2 自治会の役割と運営課題
(1)親交会の概要
(2)親交会の運営体制
(3)親交会長の役割
(4)親交会の抱える課題
3 考察
(1)持続可能な体制構築への課題
(2)親交会同士の交流・連携
(3)地域コミュニティのなかでの自治組織の意義
(4)行政との新たな関係づくり
4 小括
第 6 章 住民自治組織への期待
1はじめに
(1)本章の課題
(2)既往研究と本研究の位置づけ
(3)調査分析方法
2 大崎市における 地域自治体制整備の取り組み
(1)行政が進める地域運営体制整備の課題と方向性
(2)「大崎市流地域自治組織」の3つの特徴
(3)岩出山地区の住民自治組織の性格
3 既存組織・団体の現状と課題
(1)地区内で活動する組織・団体の状況
(2)既存組織の抱える課題
4 住民自治体制整備の推進と課題
(1)行政の取り組みから見えてきた課題と方向性
(2)地域での取り組みの成果と方向性
5 考察
(1)地域団体の課題
(2) 住民自治組織による地域運営の課題
(3)住民自治組織の限界
6 小括
第 7 章 新しい参画形態の可能性
――「臥牛プロジェクト」からの示唆
1はじめに
(1)本章の課題
(2)既往研究と本研究の位置づけ
(3)「臥牛プロジェクト」立ち上げの経緯
(4)調査分析方法
2 地域活動の課題と新しい参画のあり方
(1)地域活動を取り巻く現状と課題
(2)「臥牛プロジェクト」の成立過程と特性
(3)「臥牛プロジェクト」の地域への効果
3 考察
(1)活動の展開プロセス
(2)既存組織との組織特性の相違
(3)場の形成と合意形成の手法・その効果
4 小括
第 8 章 持続可能な地域社会の実現に向けて
1 持続可能な地域運営に必要な要素
2 今後の地域運営のあり方への提言―実践コミュニティ論を踏まえて
3 本研究の限界と今後の課題
あとがき
参考文献
図版一覧
初出一覧