世界はなぜ小島秀夫に熱狂するのか?
映画や文学からインスパイアされたセンスを、
どのようにゲームに反映させてきたのか? ゲームは新しいアート足りえるのか?
ゲーム研究の最前線から、 その独創的なデザイン哲学と美学、
物語の深み、映画的演出、メタ的なシステムを通じて、
世界を代表するクリエイターの歩みと全作品を詳述した、はじめての本。
映画のミミクリ(模擬)から、ゲームでしか表現しえない世界体験の創出へ。
米日の戦後カルチャーを遊び心をもってリメディエートすることで、現代ゲームを新たな総合芸術へと昇華させたホモ・ルーデンスの哲人・小島秀夫の軌跡を、緻密な調査と国際基準のゲーム研究・批評の概念装置を結集して多面的に解析。日に日に崩壊してゆくパックス・アメリカーナの現実を、ゲームの側から逆照射していくだろう最新作『デス・ストランディング2』を受け止めるための知的準備としても、本書は最適なパラテクストとなってくれるはずだ。
──中川大地(評論家/編集者/ゲーム研究者)
商業ゲームに高度なテーマとメッセージを持ち込み、〈作家〉としてのペルソナを自覚的に築き上げてきた小島秀夫。その「プログレッシブ」なゲームデザインを、社会批評的な物語、ミクストメディアの美学、テーマに沿ったルールに基づくシステム、再帰性(メタ性)という四つの側面から分析し、その独特なデザインセンス、ビジョン、哲学を解明する。『スナッチャー』から『ポリスノーツ』を経て『ときめきメモリアル』へ。そして『メタルギアソリッド』から最新作『デス・ストランディング』へ。日米を往還するゲーム研究者ブライアンにいざなわれて、新たな小島秀夫を発見せよ!
──吉田寛(東京大学文学部教授、『デジタルゲーム研究』著者)
<おもな内容>
はじめに ビデオゲームは産業であり、文化となった
序文 小島秀夫のようなクリエイターはこれまでに存在しなかった
1章 〝作家〟としての小島秀夫の特徴――ゲーム研究の視点から
監督の主導権
ゲームにおける〝プログレッシブ〟なテクストの創造
クリティカル(批評性のある)ゲームとは?
本書の構成
2章 コナミとMSXで学んだこと――制約と創作
MSXならではの体験デザイン
〝僕の体の70%は映画でできている〟
コナミ開発3課
ステルスゲームの誕生
緊張感とカタルシスのゲーム性
説明書というパラテクストの活用
『メタルギア2 ソリッドスネーク』の制作
体験のディレクション:プログレッシブなゲームデザイン
社会批評とメッセージをゲームに持ち込む
ミクストメディアの美学
創発的なシステムがテーマを補完する
ゲームにおける「第四の壁」とメタ的な空間
ゲーム体験を拡張する方法
The Best Is Yet To Come――さらなる作家性を求めて
3章 小さなチームで大きな世界を創る――ものづくりの極意
『スナッチャー』と『ポリスノーツ』におけるメディアからの影響
ネオ・コウベの世界構築
世界観とは?
映画/アニメの再メディア化
ビヨンドの構築と〝マルチプロセス・シナリオ〟
感情に火をつけ、意識を高める
移植版から移植版へ、ビヨンドの再設計
メタ性でゲームを拡張する手法
80年代日本の文化背景
小島組ブランドの確立
4章 プログレッシブなシリーズ――革新性と大衆性
『メタルギアソリッド』におけるコジプロの集団的デザインとは?
続編に対する批評的実践としての『MGS』
プロット:テーマ的なつながり、インタラクティブな物語、シリーズ間の関連性
スタイル:ミックスされた影響、映画的なカットシーン、記録映像
音楽と声優の役割
長いカットシーンの重要な機能
システム:環境、アバター、インターフェイスにおける概念的なゲーム性
環境:フィールドワークと没入感
アバター:敵キャラクターとプレイヤーキャラクター
スネークとプレイヤーの感情
インターフェイス:メニューと管理
メタ性:繰り返しとメタ
小島秀夫の遺伝子
分散型の主体性
5章 ライブ・オプス(LiveOps)という仕組み――システムと環境
小島の携帯ゲーム機向け作品
『ボクらの太陽』――環境をゲームメカニクスとして取り入れる
『ピースウォーカー』――協力プレイとカスタマイズ性
シミュレーションとオープンワールド
反戦・反核という選択
『デス・ストランディング』における断絶の修復
同時代性のある物語
映画的ビジュアルの融合
抵抗としての長回し――スローシネマの視点
創発的なシステムと複雑な環境
つながりを生むメカニクス
非同期マルチプレイによるつながり
社会関係資本
小島のプログレッシブなデザインの一貫性
6章 ブランディングとセルフプロモーションの革新性――コジプロの遺産と未来
解説 破壊ではなく設計のためのメタ表現──小島秀夫監督へ 藤澤 仁(第四境界 総監督)