三度目の婚約破棄。
それが、カレン・フォードリックの恋に対するすべての希望を終わらせる――はずだった。
名門公爵家の令嬢として育ちながらも、婚姻には縁がないまま十八歳を迎えたカレン。次こそはと願った婚約もあっけなく終わり、独りで生きる道を模索しはじめた矢先、差し伸べられたのは思いがけない縁談。お相手は、この国の第一王子にして“冷徹王子”と噂されるアルノフ・アードー。
政略結婚――愛のない、ただの義務。
そう思っていたのに、交わす視線、重なる指先、そのひとつひとつに秘められていたのは、誰よりも不器用な想いだった。
「優しさを信じたい。あなたの心が、冷たさの奥にあるのなら……」
そんなある日、謎の呪いにより、カレンは人の“心の声”が聞こえるようになってしまう。
その時、彼女が聞いてしまったのは――
冷徹な王子の、誰よりも切なく甘い独白だった。
本音を隠した王子と、想いを知ってしまった妃の物語