少子化にもかかわらず、特別支援学校・学級が増加の一途をたどる日本。一方、イタリアでは障害児の99%が健常児と同じ教室で過ごしている。日本の「分離教育」の現状に大きな疑問を抱いた特別支援学校教師が「フルインクルーシブ教育」の国に旅立ち、教育現場に入り込んで観察し考えた1年間の記録。
「イタリアの教育が築き上げてきたインクルーシブ教育を支えるこうした論理を前にすると、日本の教育界では、まず障害児が通常の学校で教育を受ける権利そのものが未だに認められていないことが分かる。そして、そのために障害児の存在を教育制度の根幹に組み込むことができず、結果として、障害児と健常児が相互に刺激し合い学び合うことで、両者が共に発達し成長していくというダイナミズムに満ちた学びの場をつくり出せずにいることに改めて気づかされるだろう」――(本文より)。
〈目次〉
はじめに ――新たな旅の始まり
Report 1 「共に生きる」を学ぶ―リミニの「永遠の」教育学園訪問記―
Report 2 学校は社会を映し出す鏡―ボローニャ大学「支援教師」養成講座①―
Report 3 イタリア式インクルーシブ教育の秘訣―ボローニャ大学「支援教師」養成講座②―
Report 4 地域に開かれた学校―ローマの子どもたちの夏 サマーセンター―
Report 5 これはボランティアじゃないんだ―ローマの障害のある人々の夏 サマーキャンプ―
Report 6 インクルーシブな教育を継続させる「学校群」制度―ローマ、ボローニャ、サルデーニャ島の視察旅行―
Report 7 ICFモデルに根ざした個別教育計画と実践―サルデーニャ島での2度目の教育実習―
Report 8 自閉症の生徒とクラスメイト―イタリアの学校のインクルーシブな学習環境づくり―
Report 9 地域の専門機関が果たす役割―ボローニャのカヴァッツァ盲人施設が担う機能―
Report 10 ローマのヴァッカーリ特別小学校―フルインクルーシブ教育のイタリアに残された特別学校―
Report 11 イタリアの高校で学ぶ障害のある生徒たち―フィレンツェのL科学高校とトリエステのC言語高校―
Report 12 アッシジ盲学校を支える二つの専門機関
論 考 なぜインクルーシブ教育なのか―イタリアの教育を支える理念と論理―
おわりに
コラム1 ろう者たちのバール「Senza Nome」
コラム2 星空映画と車いすユーザー
コラム3 ヴィチェンツァのキエリカーティ宮殿―誰もがアクセス可能な美術館をめざして―
コラム4 リミニ近郊にあるP小学校長へのインタビュー
コラム5 アンコーナの「手で触る」オメロ美術館
コラム6 精神科医フランコ・バザーリアと歩んだイタリアの精神医療改革―ミケーレ・ザネッティとの対話―