かつて故郷が獣人によるヒト狩りに遭い、復讐を誓って生きるヒトのベータ・フィオは、獣人が治めるエルドラ皇国皇子であり村を襲った白狼アルファ・シンに仕えていた。
虎視眈々とシンを狙うが、彼が身内から命を狙われる立場にあり、それにもかかわらず周囲を分け隔てなく思いやる人柄だと知る。フィオを見守る穏やかな視線と温もりに戸惑いはじめたとき、獣人の集まる場でベータにはありえない熱に襲われる。抗えない本能に呑まれたフィオが救いを求めたのは、仇であるシンだった。
熱がひいたフィオに残ったのは、自分がオメガという現実と、ツガイの証であるうなじの噛み痕。
ツガイになり、シンからさらに大事に扱われるようになるが、この痕は彼の優しさ故の処置、そう思うとなぜかフィオの心は軋み……。
「――そうか、お前は、俺を慕っているのか」
憎むべき相手とツガイになり、愛おしく感じてしまったら。
孤独な白狼アルファ皇子×ヒトの使用人。復讐の先にある、ふたりの愛の行方は――!?
シン視点でおくる、その後の甘い一幕を描いた書き下ろしSS「ぬくもりの在り処」も収録。