亡き親友の忘れ形見は、35歳にもなって女を知らぬ、あまりにも無垢な男(ひと)だった。
夫を亡くし、静かなな日本家屋で時を過ごす美熟女の綾子。
白髪を結い、気高く生きる日々は満ち足りているはずだった。
この身体の奥に、忘れかけた“女”の熱が熾火のように燻っていることに、気づかないふりをして……。
そんな私の前に現れたのが、亡き親友の息子・雄大(35)。
恋愛も知らず、自信なさげに俯くその姿に、私は見てしまった。
純粋な魂と、満たされる日をただ待つだけの未開の肉体を。
「もったいないわ……」
それは憐れみか、それとも孤独な私の我儘か。
彼女は彼を家に招き入れ、禁断の扉を開くことを決意する。
指が、唇が、そして肌のすべてが、彼に快楽を教え込んでいく。
無垢な身体が悦びに震え、私に応える熱を帯びていく様に、自身の“女”もまた、再生していくのを感じていた。
これは魂の救済か、それとも許されざる罪か。
私がこの手で男にした青年と、再び女として咲き始めた私。二人が行き着く結末とは――。
※ジャスミン書房エピソードは1話完結の短編官能レーベル。通勤時間や眠る前に読める“濃密で短い官能”をお届けします。