美食の国、イートリア。
「大鷲の君」として親しまれる王子の成人を機に、花嫁探しが始まった。
選考基準は料理。16歳以上の女性であれば、身分に関係なく参加できるという。
家族から受け継いだ小さな食堂を営むミリーナはそれを他人事のように感じていた。
この国では濃厚な味が基本とされる中、彼女が提供するのは野菜を主にした薄味の料理ばかり。
宮廷の豪華な食事に、自分の味が合うわけがないと思っていたのだ。
花嫁選定の儀が始まり、賑わう街を横目に買い出しに出かけたある日、
ミリーナは店の裏口で体調を崩した貴族らしき男性たちと出会う。
彼らに声をかけたことがきっかけで、彼女の日常はすこしずつ変わっていき……。
食と恋、そして町娘と王子が織りなす、じれったくて甘酸っぱい物語の幕が開く。