都民もクマ鈴が必要になる日が来る!?
一線を越えてしまった、外来ネズミと人間の関係
港区育ちのカブト・クワガタ急増中!
プロ・ナチュラリスト(プロの自然解説者)が語る、思わず人に教えたくなる“都会派動物たち”のエピソード。
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1995年8月1日、私は、『都市動物たちの事件簿』(NTT出版)を出させていただいた。
あれから三十年が経ち、東京を中心とした自然環境もかなり変わった。そして、新たな「都市動物の事件」もたくさん発生している。それで、続編になる『新 都市動物たちの事件簿』の執筆を決心した。
それにあたり、改めて最新の都市動物事情を、確認、観察、調査してみると、予想以上の大きな変化に、自分でも驚いてしまった。
1995年当時、東京では珍しかったクマゼミは、今では東京都心部のあちこちで鳴いているし、街の至る所で見られたアズマヒキガエルは、一部の地域では絶滅危惧種に指定されるほどまで減ってしまった。
私は、自然というものは、もともと少しずつ変化していくものだと思っている。
しかし、現在のそのスピードは速すぎる。三十年という歳月ではとても考えられないほど、都会の自然環境が変わってしまったのだ。
このことは、大きな問題である。できる限り、この変化のスピードを遅くする努力をしなくては、私たち人類の将来も暗い。
そして、そのためには、まず、今起きていることを皆が知ることが大切だと思うのだ。
(本書「はじめに」より)
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[目次]
File.01 東京二十三区民がクマ鈴を持ち歩く日
東京・町田市にクマが出没!/獣道にしかけた罠にかかったのは…/どちらかというと、菜食主義のクマ/人とクマの境界地「里山」の減少がもたらす影響/住宅地にクマが来る、もう一つの意外な理由
File.02カブト・クワガタ特需の深いわけ
大都会に増加するカブトムシ、クワガタムシ/「昆虫酒場繁盛店」の開店/自然界のつながり
File.03 「アーバンオウル」登場
タヌキを探すつもりが…/〝都会派フクロウ〟が増えた四つの理由/都会に適応する生き物たち
File.04 ラスカルの次はバジャー
子どもたちには秘密/「森の道化師」「同じ穴のムジナ」/人間を怖がらず、雑食なら大都会も合う/もう「タヌキ汁」にはならない「バジャー」たち
File.05 アーバンスカンク大進出
カメムシはなぜ臭い?/激増のすべてに地球温暖化が関係/外来種なのか、在来種なのか?/二種類のカメムシの栄枯盛衰
File.06 ヤマヒヨドリ出現
鉄道ファンと思いきや…/鉄道線路に沿って海から山へ移動?/「イソ」ではなく「ヤマ」
File.07 カエル合戦終戦
〝アズマヒキガエル・ロス〟/日本固有種のいわゆる「ガマガエル」「イボガエル」/バトルロイヤル「カエル合戦」/二〇二三年のアライグマ大進出/悪いのは外来の生き物ではない
File.08 幸せ?の青いダンゴムシ
アルマジロのような小さな生き物/レアな真っ青な個体/すぐ近くにいるかもしれない
File.09 空を埋め尽くす絶滅危惧種
空一面に広がる驚きの光景/なぜ絶滅危惧種が大群で現れたのか/北極圏の自然環境の影響
File.10 謎の水獣マツドドンのその後
白昼堂々と人々の目の前で泳ぎ回る水獣/一九七二年、千葉・松戸の未確認生物「マツドドン」/人間とマスクラットの〝一線を越えた関係〟
File.11 セミ界のニュースタンダード
ほぼ一○○パーセントクマゼミ!?/「セミ時計」/「セミ王国」日本の移り変わり
File.12 あちこちで結成! 都会の「鳥」内会
日本最小のタカの都会での子育て/人間の存在を利用することも…/ツミとオナガの互助関係
File.13 「私有地」という名のサンクチュアリ
秘かに横浜で生息する希少なトンボ/生き物の小さな楽園を作る「私有地」/点が線に、さらに面になるように
File.14 カウントダウン、キョンの上京
驚異的な繁殖力を持つシカ/台湾動物だらけの伊豆大島/千葉県でも爆発的に増えたキョン/そして、県境を越えていくキョンたち…
File.15 「動物事件」の起こりやすい都市の自然観察ポイント ベストテン
第十位 古いカレンダーの下/第九位 フジ棚/第八位 学校プール/第七位 樹名板の裏/第六位 人工砂浜/第五位 プランターの下/第四位 夜の自動販売機/第三位 ビオトープの池/第二位 運河に架かる橋/第一位 三角コーン