時は第二次世界大戦末期。
名家の嫡男・彰人(あきひと)に突き付けられた、一枚の「赤紙」。
それは、彼に長年仕え、密かに想いを寄せてきた使用人・千代(ちよ)の運命をも変えるものだった。
「お坊ちゃま、出征する前に私を抱いてください」
出征を翌日に控えた夜、千代は生涯一度の覚悟を決め、彰人の部屋を訪れる。
幼い頃から胸に秘めてきた、許されぬ恋心。
だが、その願いはただの情欲ではない。彼の「生きた証」をこの身に宿し、彼の命を未来へ繋ぎ止めたいという、悲痛なまでの祈りだった。
死を覚悟した男と、命を繋ごうとする女。
厳格な身分の壁を越え、二人の肌がしっとりと、そして切なく重なり合う、生涯ただ一度の夜。
夜明けと共に訪れる、確実な別れ。
戦火の中で交わされる、命の契りを描く、濃厚で切なすぎる1話完結・官能ロマン。
※ジャスミン書房エピソードは1話完結の短編官能レーベル。通勤時間や眠る前に読める“濃密で短い官能”をお届けします。