狩野先生の絵を受け入れられる人はとても楽しめるセットだと思う。私は丁寧な仕事に満足している。細やかにきちんと描き込まれていて、一頁一頁コミック世界を広げいけて楽しめる。私はさらりと読めるものより、コマがどのように切り取られ、どう見せてくれる
か、どんな場面が印象に残るか、頁をめくる手が止まるくらいこだわり作品力を見せてくれる物が好き。狩野先生の絵は3作品とも、私のHQに欲しい水準を遥かに軽く越えている。中身に比べると値段が不相応に高過ぎると思える作品がゴロゴロしてる中、HQコミック界には貴重な何人かのクオリティ高めの一人と思う。
生き生きしているキャラたちが良い。どうやったら美しく描けるか、その線一本を考えて描いているように見える所が多い。キャラに着せるファッションも良い。
何より、狩野男子、私にはセクシーに見えて好ましい。特に三作目の「幸福お届けします」の布地を通して目に飛び込む身体が艶かしい。媚びたコマはないのに、立ち姿が目に嬉しい。
「プリンセスは逃走中」ー映画「ローマの休日」のように、楽しい宮殿外の日々を送ったプリンセス。彼のヒロインへの接し方がストーリーを面白くさせてなかなか無い展開へ。自由を愛した彼の、その自由さをヒロインも間近で共に楽しんで、絶対そんな思い出、思い出になるだけならとても辛いかも、という感じ。追っ手の来る緊張もスパイス。彼がヒロインに対してしたことが大きい話。
「ウィークエンドロマンス」ープリンセスは逃走中のほうにもスリルがあるが、こちらは嘘がばれるのではと、読み手のこちらをハラハラさせながら、望み薄だった彼が結局ヒロインに、というプロセスを味わう。結構あるHQ記憶喪失物の中では、私の記憶には相当強く残る作品。やはり、彼の幸せをまず考えて、自分の気持ちに素直に従うのが大切、と、ほっとする。
「奇跡お届けします 」ーこれが一番話としては平凡。ヒロインの作為無きファーストネーム呼びに唖然としたけれど。あなエピソードはちょっとズルい。彼の自己抑制もカッコいい。子どもたち一番というのも素晴らしい。ヒロインの彼への思いだだ漏れ、ヒロインが彼を勝ち取ったんだな、という感じがわざとらしくないのに、でも食い込みの成果を感じさせるストーリー。
単品で読んだので、私はこのセットの形で読みたかったと思う。
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