愛する家族と愛する男性の狭間で苦しむヒロインが取った解決方法は、既に腹を決めていた彼を驚愕させた。そしてそのヒロインの捨て身の行動の、隠しようもない愛と勇気。愛する人のために死ねるか、という、よく言われる究極の愛の命題を、このストーリーは壮
大な歴史の陰謀の中で、見事に美しい姿で提示してくれる。
ヒロインが彼のために断頭台の上に登って執行官に訴える姿は、まさに、歴史舞台の権力闘争のさなかに咲く大輪の薔薇。自分の選択に些かの躊躇もない堂々たる愛の開花。
見事なまでに毅然と進み出ての公衆の面前での直訴、愛し合う男女のはかない(HQなので読者はクライマックス後に期待できる)気持ちの確認。
二人とも、自分かわいさよりも、相手のことを思っているという、崇高さ。
家族を人質にとられて意に沿わぬ行動を強要されていたヒロインが切れるカードは無かったから。
最高権力の座にいる女王も、王としての孤独と女としての寂しさとを抱えている。
そんな、厳しくも強く生きなければならない女王を、悪者として描くことはできず、物語の決定的方向付けのみ担う。
このシリーズ1、2と読み進めてきたが、敵だらけの中で迂闊に他人に心を許せずサバイバルしなければならない人間たちの、疑心と信頼の関係がよく表されていて楽しめた。
シリーズそれぞれ独立して面白い上に、繋がりが適度に関心を縦横に広げてくれて、一層登場人物たちに愛着が持てる。
96頁の、コナーの後ろ姿の肩が良い。
星はもうひとつあげたいくらいだ。
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