忘れられない夏。遊びが一瞬で悲しみに変わった夏。思い出が苦しすぎて逃げた。
三部作全て、少年時代の辛い出来事を共有するローナガン家の従兄弟同士3人のそれぞれの15年前の夏との向き合いかたを示す。
本作は、幽霊物で、秘書物で、身近な者の死
を体験した人間の自責の念からの脱却がテーマ。
瀧川先生自身が描くのが珍しいというロン毛男。
いえいえどうしてとてもチャーミングなビジュアルに仕上げてくれた。人柄がいいから事件の後遺症も強烈。現代の、いじめで他人を自死などに追い込む人間に爪の垢でも煎じて飲んで欲しい位。ブロンズ像という割にかなり痩身で、ヒロインが居ないとろくなものを食べずに済ませている、というのを裏付ける。書斎に籠って執筆生活は太陽とはあまり関係がない。むしろ、一線で活躍の著名ホラー作家であり、屋敷に取り憑いている霊がこの話の存在感ある脇役だとは、そういう系の要素揃えた感が技巧的。
その割に、屋敷初日の心霊現象に神経質でなかったり、むしろ湖の方に向き合えない姿だったりが対照的に作られている。
ヒロインは至って一般的な女性。読み手として気持ちを理解しやすい。物語前半はその心情描写がコミカルで、重い過去を彼女が知るのを後半に持って来るなどして、全体のトーンを軽く仕上げる工夫。
邦題は意味深でなかなかセンスがいいと思う。但し副題はいつもながら陳腐。殆どその副題を表す場面なんて無いのに。
それにしても何が眠るのか。湖なのか、彼の魂なのか。一方ヒロインは眠れぬ夜が続くー彼への思いを断ち切る困難さ。
本作も、彼の心の処方箋のほうはヒロインが決定打を打たず、ここは第一作のメインキャラたち。
祖父の心情は割と脇に置かれている。これは少年たちには残酷な事件であり、致し方なかったという側面があるのだが、ここにスポットは?
第三作を随分前に読んだきりで思い出せない。確か、死んだ少年のガールフレンドの話であったと思うが、残された者達である少年一人一人の話で終わってしまったか? これから見に行こうかと思う。
秘書とボスの立場以外の設定である、過去に苦しむ彼の心が、解放され、前へ進む、というのがストーリーの側面を形成。
ヒロインの料理に頼っていた姿を見せた後の、彼の頑張る料理への取り組みシーン、見当違いの努力が微笑ましい。
作中のヒロインは余計空しくなっているが。
64頁主語省略ややこしい。
もっとみる▼