自分を守ってくれる人の逞しさに、心引かれて行くのは何処でもいつでも誰でもある普遍のこと。
命の危険、どうやって助けるかわからないけれども、辛抱強く快復に付き添う騎士は、普通に恋に落ちても不思議はないが、ヒロインは強固に壁を持ち続ける。
過去の悪夢を抱え、それでも、逞しく生きてきたヒロイン。
称賛されるような武功を遂げながらも、感謝されるどころか王に虐げられる騎士ニコラス・タルボット卿。人々は彼の活躍を誉めそやすのに、その出自故に王は正しく評価しようとしないのだ。宮仕えの苦しい立場、パワハラまがいであるのに、この王の横暴野放し。
野盗により、野盗らが殺してしまったとさえ思うほどの重傷を負っていたヒロインを、彼が自らも痛む矢傷を抱えながら、献身的に手当てし助ける。
その姫からも、感謝されるどころか、強く警戒される。しかし、頑なな彼女の心の、奥底の恐怖心に、騎士は温かく接し、彼女をそこまで追い詰めた過去の事件の秘密をヒロイン自らも語って前半は、二人の空気が少しだけ緊張が解かれるのを見届ける。
牧先生らしい線が、骨張った身体ではなく、傷つけられた人の繊細さとか、人を助ける優しさの表現に通じていて、決して楽しくはなかったであろう騎士のこれ迄の半生にも、希望になるかもしれない明るさを感じさせる。
悪いやつらは、この一冊では揃ってのさばったまま、後半どうなる、と、成り行きを見守る読み手の私は関心を、二人の関係の進展のほかに、不穏なものの一掃を急いで安心したい思いにも持ってかれる。
このテのHQは、ヒロインの相手となる男子は、女性の魅力を目の前にして我慢する高潔さがかっこいいもの。そこを、きっちり描いてくれれば、もうそれで、彼の人間力が出るので十分。
勇敢で、職務に忠実に当たろうとする野心の無い臣下を務めようと健気(!)なタルボット卿。ズルく影で小悪人を使って立ち回る人物と好対照であるほど、最後に、愛と正義が勝つ、というセオリーに期待が高まる。
気持ちよい二巻目を願ってこの一巻目を読んだ。
ヒロインであるキャトリンの目が、大きさと配置に気になる絵があった。
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