憎む相手の娘を愛してしまうことなどあり得ないのだろう。私ももしも肉親を殺されたら、その仇を取りたくて、近づき、今にもその目的を果たそうとすることが出来る力を得たとしたら、心ひかれる出会いのために中止できないかも。復讐が虚しいなどという綺麗事
を言うつもりはないから。命を取られた姉の為なのだから、譲れないかもしれない。
でも、悪人の子どもに罪はない。
確かに真理ではあるけれど現実、極悪人の身内を私達の社会だって寛大ではない。
彼が娼婦の如くヒロインを扱い気持ちは晴れたのかと言えば、益々気持ち深めただけ。愛する相手と憎しみの相手とが違うのに、筋違いの復讐は、相手を見下げることで正当化したかったのか。誤解もHQお約束で付いてくる。
ヒロインが男性との深い関係皆無と明らかになったところで、ヒロインを傷つけることを止められればよかったのに。但し商業的体裁は取れないが。
彼の素晴らしい社会活動の対象たる社会の弱者達の境遇と、ヒロインの境遇とをダブらせることが出来ていたなら。もっと早くに彼女の社会活動のことが彼に知られていたら。
というあれこれを、全てすれ違わせて物語はヒロインの不幸メインで進行。
彼が最も救済すべき対象たる目の前のヒロインは、その復讐相手の子どもであることに、また、社会的弱者イコール貧者で、金持ちは恵まれてるとの先入観から逃れること出来ずに、ヒロインは残酷な仕打ちを彼から。
それは、最後まで許さなくて良い、との感想を読み手に持たせて当然の物語構造。
HQは誰の感情に寄り添うか、ヒロインでしょう。
このストーリーは、彼を形成した場面描写が冒頭一頁のみで、ほぼ全編ヒロインサイドの悲劇メインにしているから、こうなるのだ。
そこを許すのか、許せるのか、という気持ちを読み手に持たれるのはこの物語の宿命。
ただ、彼サイドの不幸が常に事後説明の流れというのが原作の通りとするなら(未読です)、状況説明にコミックとしてはドラマチックな絵的要素を盛り込んだ方が良かったのでは?
二人をもう一度引き合わせるのは、彼の善行の成果としていいアイディアだったが、苦悩する彼の描写のウェイトがもっと欲しかった。
極悪人を悲惨な最後にして欲しいが、HQてそこは妙にある意味リアルに逃亡の高飛びとか、読み手の義侠心度外視の寛大(!?)な末路。ヒロインは不幸から解放はされるがこちらとしてはモヤモヤ。
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