砂漠の異国情緒ではなく、過酷な自然と医療の僻地の現状を伝えてくれる真面目な作品。甘いラブではなく、生半可な覚悟では適応できないことと彼の日常がそもそも甘くはないことを、しっかりヒロインと共に読み手のこちらに見せてくれる作品。
モロッコの古
い豪邸を改築した施設の写真を見たことがある。隙間なく装飾されるかのような見事な内部は、外の砂漠とは対照的。
とかくこちら外国人にとり、長く住み続ける訳でもないため、生活者の観点を持ちにくい。
実際多くのHQも、ちょっと刺激される異国情緒に訴えてくる舞台装置、というだけで、物語中に環境面のシビアさは後ろに隠れていることが多い。
それはそれで、一つの夢物語であって悪いとばかりは言えないが、一方で、この話のようにハードな日々への現実を見据えても、ヒロインが好きな人のところに飛び込む、そんな愛の物語も魅力的だ。つまり、この生易しくない苦労や試練の連続が待ち受けること自体が、彼の気持ちとリンクしている。そこに、自分に厳しく生きてきた彼トゥレル先生の、自己中心的なところのない彼の素敵さを感じられるのだ。(彼は身勝手な理屈だったと言っていることだが、大切だからこその、映画カサブランカのハンフリー・ボガード的な役まわり。)
そもそも、人を救う真剣な行動が、HQではヒロインの好きな人の持つ人間的な魅力となって発揮されてる作品が結構ある。そういうエピソードが描写される作品は大体好き。そんなことを日常とする職業を選んで、一生懸命に向かっているところは、カッコいいので、どれほどヒロインが期待してしまうような甘い言葉がなかったとしても(このストーリーなど、却って彼の言葉は冷たい位)、いや、実は愛する人には本気の感情が深い筈だ、と、読者のこちらがクライマックスでこれまでの彼の姿勢の延長予想をどこかで裏切ってくれることを、待ってしまう。
彼の決壊は良かった。ヒロインの押しが押し付けがましくなく、伝え方が効いた、というところがよく感じられた。
幸せとは何かを、テーマ性を押し付けず感じ取らせてくれた。
子どもたちとふれあう絵が自然だった。
好きになった人が別の人を向いてしまった現実もまた厳しい現実ではあるが、ブルックへの同情票分だけ調整させてもらい、星は4,4のつもりで。
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