産婦人科という、やりがいはあっても大変な専門を選んだ人が、その医者になるという志を失うことなく職業にふさわしい日々を生きている。それだけで人間として三重丸な上に、唐突なヒロインの申し出に、わたりに船とばかりに乗った結婚にわきまえのある接し方
。
その他の偽装結婚ものは比較的早くから男女になること多いのに。
ここでは、しかも、非難めいた言葉の矢で傷つくシーンさえない。冷たいところのある偽装結婚もHQ には多いのに。
二人の間に大きな事件発生はない。
ヒロインが結婚というものに期待の持てない生い立ちを経てきているからか、極端なくらいおとなしい毎日。新婚後デートもある意味大きな何かを広げてくれるエピソードを期待させない場所をチョイス。
(とはいえ、別の意味でちょっとインパクトあるハプニングが待っているが)
ロマンスの相手としては素晴らしくても、家庭における夫、子の父親になったときどうなのか。というのがお話の世界と違った現実というもの。なのにこの点全く申し分ない。
そして、勘違い野郎ではない程度にヒロインに歩み寄って自分への愛を推量。この押しも良し!
確かに、シリーズ三作品の男性は何れも似てしまっている。同一作者の手になるものなので、厳しいとは思うがそれは少しバリエーションを頑張ってもよかったかもしれない。
三作品中、この物語の男性のヒロインへ接し方は最も嫌みがなかった。
当初の二人の出会い方は、ヒロインの側も彼を警戒させて仕方のないところがあり、よい印象を持たれにくかったのは無理からぬことだった割に早期に親しさも表明していた。
そして、風貌に似合わず、冷たいというよりもむしろ少々熱い血の持ち主で、自分の職業に強い使命感があることを正々堂々と出している男性。ヒロインの不幸な少女時代や今も暗い影を投げ掛ける母の存在という負の要素を、勘違いになっていない自信によって取り除いてくれるだろう、との期待を持てる。
そういう人に出会えてよかったね、というほかないストーリー。
なので、様々な困難も、熱い血も通わせながら理知的に解決をしていくだろうと、恋に夢を持っていなかったヒロインに恋を味あわせて家庭の幸福を手にさせた彼が、素敵だ、という作品。
このお話の場合は、男性の人柄だけが最重要である。
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